シーズン01 第090話 「氷山のぶっかけ」
「氷ってさ」
「うん?」
「どうしたらかき氷になるんだろう」
「削ったらよ」
「そうじゃなくて。例えば砂って2mm超えたら礫じゃない?」
「別にかき氷にそういうのはないわよ。そもそもあれとけるし」
「そうか、そちらも考慮しないと……」
「いや、液体になってたら普通にそれはかき氷じゃなくて砂糖水よ」
「あれ? かき氷には砂糖かける派?」
「砂糖をかけるって何よ」
「いや、塩をかけるみたいに」
「かき氷には当然塩をかけるみたいな認識は普通ないわよ」
「スイカ」
「ああ、スイカにかけるみたいにって話?」
「そうそう。同じようにかき氷にも角砂糖をのせて食べる派なのかなって」
「……さては塩スイカやったことないわね?」
「はい」
「かき氷なら私は普通にシロップ派よ。カルピスもたまに使うけれど」
「カルピスってあれ原液でかけるの? それともカルピスウォーター?」
「原液よ。かき氷シロップだって飲むときは薄めるじゃない」
「いや、かき氷シロップを飲むのは糖尿病患者でしょ」
「炭水化物の消費量が異常に多いあなたに言われたくないわよ」
「炭水化物は炭なので糖ではありません」
「糖尿病患者でもそんな言い訳効いたことないわよ」
「糖尿病患者ではないので」
「でしょうね」
「良かった良かった」
「そもそもかきシロップを飲むって言っても水で薄めるんじゃなくて炭酸水で薄めてるのよ。メロン味でやるとメロンソーダになるわ」
「なるほど、ということはブルーハワイ味で薄めるとハワイソーダに」
「ハワイソーダって何よ」
「ハワイの……溶岩……」
「溶岩?」
「はっ、炭!」
「いやだから炭水化物は炭じゃないわよ」
「そもそもブルーハワイとはいったい何なのだろうか」
「お祭りとかであるわよね」
「メロンとかレモンとかイチゴとかはわかるけど、ハワイって果物だっけ?」
「地名ね」
「知名由来のそういう果物があるわけでは」
「ないわね」
「よかった~」
「別に良い悪いの問題じゃなくない?」
「それもそうか」
「ブルーハワイ、私も気になって調べたんだけど、どうやらそういうカクテルがあるらしいのよね」
「え、あれお酒だったの?」
「かき氷のブルーハワイにアルコールは入ってないわ。名前の由来ってだけよ」
「これはお酒ではありませんってやつだね」
「お酒じゃないならわざわざ告知しないわよ」
「これはお酒ではありませんがお酒と同じお値段をいただきます」
「ちょっとお店が得するやつね」
「酒税の横領だ!」
「いやだからお酒じゃないのよ」
「法の抜け穴……!」
「抜けてないわよちゃんと外側通ってるわよ」
「アウトロー!」
「そろそろ風評被害よ」
「そういえば水とお酒の境界って」
「それはアルコール濃度で明確に決まってたはずよ。強いエナジードリンクにアルコールが入ってても未成年が買えるのはその辺のところが理由ね」
「え、入ってるの?」
「あなたが買ってるやつは入ってないと思うわよ。十五歳以上限定とかついてるタイプの強いほうのエナジードリンクよ」
「年齢制限付いてるじゃん」
「十五はほぼゼロよ」
「いや、十五は十五なのでは?」
「それもそうね」
「あとさ、あれって氷入れた場合は氷の体積もアルコール濃度計算に含まれるのかな」
「それは……よくわからないけど入れないんじゃないかしら。薄まってないし」
「じゃあかき氷に度数の高いお酒をかけたものはお酒?」
「お酒でしょうね」
「じゃあかき氷にエナジードリンクをかけたのは?」
「エナジードリンク……ではなく、エナジーかき氷ね」
「やったー!」
かき氷専門店で出るやつに
リポビタンとか掛けたりしたい