シーズン01 第087話 「懐かしのたわしコール」
「たわし!」
「何よ急に。くじ引きではずれでも引いたの?」
「ってよく考えたら何に使うんだろう」
「掃除よ」
「建前上はね」
「実際に掃除よ」
「使ってるところ見たことなくない?」
「ちゃんと使うわよ、お風呂とか」
「CMとか見ても百パーセントスポンジなんだけど」
「日常的な掃除じゃなくて大掃除とかで強い汚れを除去するときとかに使うわね」
「液を掛ければいいのでは」
「昔はそんなものなかったのよ」
「でも今はあるしやっぱりもう使ってないんじゃない? 草履みたいな感じなんじゃない?」
「少なくとも家に草履のある世帯よりは家にたわしのある世帯のほうが多いと思うわ」
「使ってる?」
「それは……どうかしらね」
「大体あれ何で全方位に栗のいがみたいなやつついてるのがスタンダードなの。絶対片方でいいでしょ」
「別に、栗の棘と違って刺さっても痛くないから良いじゃないのよ」
「でも漫画とかだとお風呂で怒ったキャラクターがたわしで他の人の背中を洗って怒りを表すみたいなシーンあるじゃん。やっぱり痛いんじゃん」
「限度があるわよ」
「ゆっくり擦っても痛い」
「速度の話ではなくて」
「角度?」
「接触面を一番広くした場合に攻撃力が最大になるわね」
「……なるほど、完全に理解した」
「あら、良かったわね」
「たわしは武器」
「違うわよ」
「確かに、言われてみれば栗やウニを武器に使っているのは見たことがない。やはり強度に問題があるのか」
「そういうことではなくて」
「……ん? 強度の問題ならそれを解決したのがたわしなのでは!?」
「だからそうじゃなくて」
「どうなんだ」
「掃除」
「失念していた」
「その……あれよ! 灯篭とかについた苔を洗い落とすのとかに今でも使うわよ!」
「おお、それっぽい!」
「でしょう?」
「ということは灯篭キラーを開発すればたわしの歴史的な役割を完全に終わらせることができるのか」
「灯篭をキルしてどうするのよ」
「キルを稼ぐ」
「キルって稼ぐものなの」
「最近はどうもそういうのがはやりなんだって」
「流行りとかじゃないでしょ」
「ほら、地球温暖化とかもあるし」
「だから流行りとかじゃないでしょ」
「言いたいことはわかった。灯篭じゃなくて苔をキルしましょうという話ね」
「なぜ今のタイミングでやっと理解したのかは不明だけどまあそういうことね」
「それは元から理解してたからです」
「おい」
「でも、でしょ?」
「まあ、だけど」
「ならば良し」
「なんでいつの間にか主導権がそっちに行ってるのよ」
「たわし!」
「そうね」
「をまとめよう」
「たわしをまとめるの?」
「話をまとめる」
「日本語は正しく使いましょうね」
「まず、たわしは昔は風呂掃除とかに使ってた」
「そうね」
「けど今はスポンジとカビ殺し液に役割を奪われてしまった」
「そうね」
「両面がトゲトゲになってるけどそこまでいたくはない。けど限度がある」
「そんな話もしたわね」
「今では灯篭の苔を洗い落とすのに使っている」
「そうそう」
「しかし灯篭キラーや苔キラーの登場によりその立場は再び危機にさらされている」
「ん?」
「つまり、たわしに残された道は、武器!」
「……んんー?????」
東京の友達はみな2万円
金貨と「針」の取引をする