シーズン01 第079話 「お刺身啓蒙運動会」
「刺身の適用範囲ってどこまでなのかしら」
「生ものじゃない?」
「でも貝は刺身とは言わないと思うわ」
「そもそも生で食べなくない?」
「カキ」
「氷」
「いや、かき氷も生だけれど、そうじゃなくて生の貝の話よ」
「食べるね、危ないけど」
「でしょう。あと寿司の上に載ってる貝もあるわよね」
「あれ生?」
「そういわれると自信はないけど、たぶん生だと思うわよ。ほら、寿司の上に載ってる奴だけはがすと刺身になるっていうじゃないの」
「じゃあ貝も刺身じゃん」
「あらら?」
「と言いたいところですが、寿司の上に載ってる奴だけをはがしても刺身にはなりません。玉子とか」
「卵のお刺身?」
「いや、焼いてるし」
「さすがに無理ね」
「生ならいけるかもしれない」
「それは寿司じゃなくて卵かけごはんでしょう」
「ほら、いくらとか」
「あれお刺身かしら」
「違うね」
「違うでしょう」
「けど寿司ってほぼ刺身なのはそうだし、毎朝食べてたらおなか壊すかな」
「朝はやめたほうがいいわよ。当たったら一日動けなくなるもの。どうしても食べたいなら生魚以外ね」
「サーモンとか」
「いや生魚でしょ」
「焼いてあるけど」
「いやいや……え、本当に?」
「さてはお寿司を食べたことがない」
「食べたことはあるわよ。でも鮭焼いたやつってもっとこう、なんていうか」
「焼き魚?」
「そうそう。サーモンは食感が全然違うっていうか生っぽいじゃない」
「ふふふ、IH調理器具のなせる業です」
「それは嘘でしょ」
「はい」
「サーモンは今度食べてみるとして、とにかく朝にお寿司を食べるなら玉子とかにしておくのが無難ね。あと稲荷寿司」
「稲荷寿司は果たして寿司なのか」
「寿司って言ってるんだから寿司なんじゃないの」
「でももとをただせば豆腐じゃん」
「玉子だって卵じゃないのよ」
「豆腐は大豆だから野菜でしょ」
「それならかんぴょうのお寿司だって」
「全面降伏ー!」
「お寿司はここまで自由なんだからお刺身ももう少し自由でもいいとは思うんだけれどもね」
「寿司の上に載ったネタをはがせば刺身なら話は早いんだけど」
「もう玉子焼きもお刺身って認めちゃう?」
「いやー。あと完全性の問題もあるし」
「定義として足りないってこと?」
「ほら、例えばフグ刺しってあるけどフグの寿司は基本ないじゃん?」
「ないの?」
「あるの?」
「いや、お寿司にはあんまり詳しくないからあるとは言い切れないけど、魚なら大体あるような気がしてたわ」
「じゃあ馬刺しとか」
「あー、馬はないわね、確かに」
「ということでやっぱり生ものって定義で貝も刺身に含むのがいいんじゃないかと」
「いくらは?」
「生もの、を切り出したもの!」
「こんにゃくは?」
「……あー」
※レバ刺しを食べたら七日経つ前に
寿司か刺身を摂取しましょう