シーズン01 第078話 「4.001×10^4」
「清流って何」
「四神の? どの方角だったかしら」
「じゃなくて川の」
「ああ、清らか流れの方ね。何もなにもそのままじゃないの?」
「いや、日本最後の清流ってあるじゃん」
「あるわね。四万十川だったかしら」
「他全部汚染されてるの?」
「そんなことはないと思うけど。単なるキャッチコピーよ」
「不誠実だ!」
「流石に何も根拠がないってことはないと思うけれど。中流に浄水施設がいっぱいあるとか」
「浄水と清流は違う気がする」
「じゃあ特徴的な魚が泳いでるとか」
「魚かー。鮭?」
「鮭ぐらいならどこにもいそうだけれど」
「熊?」
「熊は魚ではありません」
「というかあそこ本当に綺麗なの?」
「写真で見た限りは綺麗だったわ」
「風景としてでしょ」
「でも案外それが理由かも知れないわよ」
「日本一写真写りがいい川ってことか」
「って言うと聞こえが悪いけど、見た目定義なんじゃないかしら」
「最後ってことは他の川も昔は清流だったはずだけど」
「見た目がダメになったんじゃない?」
「橋とか?」
「まあそういう感じね」
「四万十川って橋ないの」
「あるんじゃないかしら」
「濁流じゃん」
「そういえば清流の対義語って濁流ね」
「濁流側から攻めてみる?」
「筋としては悪くなさそうね」
「じゃあ日本最古の清流が四万十川だとして、日本細心の濁流は?」
「雨が降った後の川」
「うむ」
「もしかして、四万十川って雨が降らないんじゃないかしら」
「四国だし?」
「なんで四国だと雨が降らないのよ」
「中国山脈と四国山脈にはさまれて云々」
「瀬戸内海があるのに難儀よね」
「川のない諸島に比べればまだましとのこと」
「ああ、貯蔵できないのね」
「四万十川がある分貯蔵できるから」
「でも雨が降らなかったら川ってすぐ枯れるんじゃないかしら」
「そうか! 四万十川は今まさに枯れかけてる川なんだよ!」
「どういうことよ」
「昔々、日本には『清流』と呼ばれる雨に依存しない川が各地にありました」
「あったかしらそんなの」
「昔話だから」
「昔話なら仕方ないわね」
「雨が降らないことで水が供給されない多くの清流は水が枯れてなくなってしまいました」
「まあ、そうなるわね」
「しかし、四国の四万十川だけは遠くから運ばれてくる地下水がなんかうまい具合につながったことで、日本で唯一清流として生き残ることができました」
「めでたしめでたし、というわけね」
「というのはどうだろうか」
「実現可能性が極めて低いことを除けば完璧だと思うわ」
「ただ一つ問題があって」
「追加で?」
「追加で」
「じゃあ駄目ね」
「ちょっとー!」
高知県西部を四国山地から
南に向けて流れる河川