シーズン01 第075話 「nを1以上6以下の整数としたときに2n-1」
「端午の節句って五七九のどれだったかしら」
「七五三?」
「七五三は節句ではないわよ」
「七月五月三月のいずれかを表すときに業界用語で七五三というのだ」
「そんな業界ないでしょ」
「ないですね」
「あと三は桃の節句ね」
「桃? 桃の旬はどちらかというと七月じゃない?」
「果実は七月だけど、確か花が三月っていう話だったと思うわ」
「なるほど。ってことは節句は名前がその時期の花になってるという構造なのか」
「桃しか参照してないから帰納的に導くのは少し無理があるけれど可能性としてなくはないわね」
「となると……端午って何の花?」
「それが分かれば苦労しないのよね」
「そもそも端午とは植物なのか」
「何とも言えないわね。字面的には違うけれど、植物は割と何でもありでしょうし」
「端……午……12時59分?」
「ちょうど昼休みが終わるタイミングね」
「つまり端午とは日の丸の事か」
「なんでよ」
「昼休みといえば日の丸弁当だから」
「いろいろ言いたいことはあるけれど、とりあえず日の丸は花じゃないわよ」
「カニ」
「は?」
「たし」
「はい」
「じゃあ梅の三月と米の九月の間をとって六月」
「日の丸弁当から離れなさいよ」
「こういうのは一度突き詰めてから考え直すのでも遅くはないのではないか」
「遅いわよ。まあ暇だから別に遅くてもいいけど」
「やったー!」
「でも、、任意の節句の月および日は必ず奇数になるから六月六日は節句にはなりえないわ」
「六月六日って何かあったっけ」
「一桁足りない悪魔の日とかじゃないのどうせ」
「六月六十六日も元日から数えて666日目もカレンダーには存在しない! 命拾いしたな!」
「誰視点よ」
「六が好きな人視点」
「サイコロ振ってる人かしらね」
「確かに。好きそう」
「というかさっきの、米が九月って言ってたけど桃の時に花基準って話をしたのに米がまた実基準で月設定されてるじゃないの」
「まあ米だし」
「日の丸弁当に米が使われてるからって理屈で実基準にしてるなら同じく梅干しが入ってることから梅も実基準にすべきなんじゃないの?」
「でも、梅は梅だし」
「一貫性がないわね」
「和心が一貫してるから」
「桃は和心じゃないの?」
「あれは夏心」
「端午の節句からどんどん遠ざかってる気がするのだけれど」
「節句の日と名前を全て列挙すればわかるのでは」
「さっきやってみたけど最後まで絞れなかったのよね。まあでももう一度やってみると、まずさっきから言ってる三月三日が桃の節句ね」
「次の五月五日が……端午? それとも子供の節句?」
「子供の節句って何?」
「子供が節したり句したりする」
「何よその動詞」
「よくわからないけど『文法を学ぶ』みたいな意味では」
「確かに節と句は文法用語……っていや、ほかの節句で全然そんなことやってないでしょ」
「たし」
「まあでも、五月五日についてははっきりしないわね。候補には残しておきましょう。次に七月七日が七夕ね」
「七夕は節句名じゃなかった気がするけど。七夕の節句とは言わなくない?」
「となると、笹の節句とかかしら。これもはっきりしないわね。でも端午ではないような気がするわ」
「そして九月九日は秋の節句」
「これは完全にわからないわね」
「祝った記憶も一切ない」
「そもそもこんなところに節句あったかしら。同じく奇数月の十一月十一日も一が大量に並んでることにかこつけたイベントをやってる以外の印象がないわね」
「三月が桃、五月が柏、七月が笹、十一月が棒状の物ってことは、やっぱり何も物質的なイメージがない九月が端午とやらなんじゃない」
「なんかしっくりこないけれどそんな気もしてきたわね。だとしたら端午の節句って何をするイベントなのかしら」
「ほら、鯉のぼり上げたり」
「串焼きにするわよ」
天体の夫婦に願い事するの、
ほかの節句と趣旨違わない?