シーズン01 第072話 「ゲ立」
「……これは、帰れないわね」
「帰れませんね。ゲリラ豪雨だからすぐ止むだろうけど」
「ゲリラ豪雨って迷惑よね」
「夕立とゲリラ豪雨の境界線ってどこなんだろう」
「夕方かどうかかしら」
「じゃあ今は夕方だから今降ってるこれは夕立?」
「夕立って言っても悪くはないけれど、少なくともゲリラ豪雨じゃないって結論を導くのは厳しいわね」
「じゃあほかの区分」
「ゲリラかどうか」
「夕立も大体ゲリラだと思う」
「豪雨かどうか」
「豪雨じゃない夕立はなくない?」
「というか立の字が豪雨を表してるっぽい感じはあるわね。実際のところは知らないけど」
「確かに雨が立つっていうと豪雨っぽい感じがする」
「雨雲が立つ……は雲の話か」
「雨雲レーダーが立つ」
「建設の話ね」
「レーダーって建設なの?」
「巨大パラボラアンテナみたいの作るんだから基本建設よ。車に乗せて億タイプもあるかもしれないけれど」
「車レーダーがあればな、雨から逃げられたんだけどな」
「そもそも車だから雨を気にする必要もあんまりないわね」
「車ー!」
「叫んでも車は来ないわよ」
「車軸ー!!」
「いや、車軸じゃ雨はよけられないでしょう」
「しかし結局夕立とゲリラ豪雨は全く同じ概念なのでは」
「私もそんな気がしないでもないのだけれど、ゲリラ豪雨って字面からもわかる通り結構新しい言葉なのよね。夕立という語が昔からありながら新しい語が作られるということはそこの間に何か差異があったと考えるのが妥当だと思うのだけれど」
「ゲリラ戦」
「違う」
「違うかー」
「最近国内でゲリラ戦やってないでしょ?」
「それもそうか」
「夕方以外に降ったときの対策なのかしら。でも夕立も夕方以外に使えないことはないわよね」
「昼立?」
「朝立とか夜立とか。聞きなれないわね」
「字面は地名っぽそう」
「地名にはある気がするわね」
「ってことはやっぱり非時間依存のため?」
「いや、だからどの時間帯でも夕立でいいのよ。といっても気象条件的にああいうのが起こるのは昼か夕方にかぎられるのだけれど」
「そうだった」
「スコールっていうのもあるわよね」
「おいしいよね」
「飲み物じゃなくて」
「降り物?」
「そんな単語はない」
「伝わらない?」
「伝わるけど」
「じゃあいいじゃん」
「伝わればいいってものでもないのよ。それなら朝立とか夜立とかもありになってしまうわ」
「むしろ普及させていこう」
「とはいっても気象条件的に朝とか夜に夕立レベルの大雨は起きにくいのよね」
「ああ、それでスコールならいけるんじゃないかって話?」
「あれは朝でも可能性はある気がするわ」
「おいしいよね、朝の炭酸飲料」
「だから」
「ゲリラ豪雨、もしかしたら夕立とスコールの中間ぐらいの強さの雨なのかも」
「なるほど。新しい解釈ね」
「基本的に気温が上がったからゲリラ豪雨が降るようになったわけじゃん? それまでは夕立という表現だけで問題なかった。でも最近になって夕立にしてはかなり多い量の雨が降るようになったと」
「とはいえどスコールよりは少ないから、新しい言葉の定義が必要になったと」
「という可能性。あと大雨洪水注意喚起的な意味もあるかも」
「避難誘導のための名づけは確かに可能性としては考えられるわね。夕立で避難してくださいって言われても基本避難しないものね」
「ゲリラ豪雨でも降ってるときは避難しちゃダメなのでは?」
「確かに」
「さて、ある程度時間が経過したわけだけど」
「全然止む気配がないわね」
「これはあれだね、低気圧」
「ゲリラ豪雨では」
「ない」
「……はぁ、覚悟を決めるしかないわね。走る? 歩く?」
「転ぶと痛いからで歩こうかな」
「それもそうね。靴も滑りやすいし。ノートだけじゃなくて本もこのまま置いていこうかしら」
「巻くビニール袋ならあるけど」
「ありがたいけど置いていくことにするわ。完全に防水できるかわからないもの。仕方ないから今夜は着替えとクリーニングの準備だけで早く寝ることになるわね」
「制服ある?」
「一応もう一着あるわ。それもダメになってしまったら……もしかしたら借りることになるかもしれないわね」
「解」
「了じゃなくて?」
「了は完了で解はわかりましただから」
「そういわれてみればそうね」
「あ、そうそう」
「何?」
「傘ならあるよ」
「……それを先に言いなさいよ!」
夕方を定義するのに夕立が
参照されるバグを解消