シーズン01 第071話 「How to get cool-hibi.」
「冷蔵庫って開けっ放しにしておくと発火するのよ」
「すごい! ガスいらず!」
「って昔は思ってたわ。実際は流石にストッパーはかかってるらしいわよ」
「扉あかないじゃん」
「扉のストッパーじゃないわよ。冷やそうとするときに熱を発生させるから、それが暴走しないように駄目そうになったらあきらめるシステムがついてるのよ」
「それ困らない?」
「別に困らないわよ。開けっ放しで火災を予防すると同時に無駄な電気代もかからなくなるし。扉が開いてたらいくら冷やしても無駄だものね」
「つまり空間的に広がっている以上打ち水は無駄」
「規模の問題よ。打ち水も広範囲にばらまけば結構意味はあるはずよ」
「打ち水と冷蔵庫って冷やす原理は同じ?」
「全然違うわ。気化熱と断熱収縮だもの」
「冷蔵庫は水流れてるイメージが強かったからあれも気化熱なのかと思ってた」
「冷蔵庫本体から水が流れてたら故障よ」
「よくよく考えたら水が流れ出るのは冷蔵庫じゃなくて冷房だった」
「なるほど。冷房なら室外機から結構水が流れ出たりするわよね。性能が悪いと室内でも垂れてきてしまったり」
「ということは冷房の性能をむちゃくちゃ悪くすればシャワー兼用も夢じゃ」
「夢よ。いや夢ですらないわよ」
「結局夢じゃないのでは?」
「結局そういうことだけれどそういうことではないわね」
「こういうことではないのか」
「そんなところね」
「ていうか何であれ水出てくるの。やっぱり気化熱?」
「うーん、冷房はあまり詳しくないのだけれど、やっぱり気化熱とは違うと思うわよ。だって冷房設置するときに水道管を通したりしてないじゃないの」
「じゃああの水はどこから。コンセント?」
「コンセントから水は流れません」
「電線と水道管を兼ねて使ってる業者が」
「いません。水だってある程度電気を通すだからまともに制御できなくなるでしょうが。そもそも水道管網と電力網じゃデザインが違うし」
「丸と三角みたいな」
「管のデザインではなく」
「じゃあ結局あの水は何なんだ」
「結露じゃないかしら、たぶん」
「てことは砂漠で冷房を運転しても水は出ないってこと?」
「出ないんじゃないかしら、たぶん」
「駄目じゃん」
「駄目といわれても。っていうかさっきからなんで冷房に水の供給を頼ってるのよ」
「水道代がかからないから」
「別に水道代が払えないような生活してないでしょう」
「いや、庶民が」
「いくら庶民でも室外機の水を集めようとはしません」
「本当に?」
「本当に」
「じゃあ冷蔵庫と冷房は同じシステム?」
「わからないけど、たぶん同じだと思うわよ。冷房の設定温度を4℃にしたら冷蔵庫になる、みたいな感じじゃないかしら」
「世の中には room of 冷蔵庫とかもあるからね」
「冷蔵庫の部屋? 倉庫とか?」
「いや一般家庭に」
「一般家庭にはないでしょう」
「地下とかにない? 竜巻から逃げるために用意した地下室を常にマイナス25℃に保つことによって夏場でも食物を腐らせずに保存可能とかそういうのない?」
「ないわよ。っていうかイメージに一貫性がなさすぎるわよ。絶対三種類ぐらいの何かが混ざってるでしょうそれ」
「じゃあ一般人はどうやってものを凍らせてるんだ!」
「冷蔵庫よ」
「冷蔵庫は4℃じゃん」
「冷蔵庫の冷凍室よ!」
「ほらね?」
「……なるほど」
「結局暑くて冷房壊れた時に打ち水効かないならどうすればいいの?」
「効かないわけでもないのよ。大規模にやらないとだめってだけで」
「大規模って何トン?」
「重さとか体積っていうよりは表面積だと思うわ。一度に蒸発する量が多ければ多いほど気化熱で涼しくなるもの。そして蒸発は水面からしか起こらないわ」
「つまり地面だけでなく壁などいろんな凹凸面に水をかけまくればいいと」
「理論上はそういうことになるわね」
「よし、これで夏でも生き残れるな」
「ただ一つだけ問題があって、結露の時とは逆に湿度が100%になったらおしまいなのよね。それ以上蒸発できなくなってしまうから」
「だめじゃん」
「まあ、打ち水でうまくいくなら冷房も気化熱システムになってたでしょうし、ある程度仕方のないところはあるわね」
「じゃあ打ち水すら駄目になったときはどうすれば!?」
「そうね、あとは……水を飲むとか」
「そりゃそうか」
「そりゃそうよ」
「あと水に浸かるとか?」
「そうね」
「そうか」
水田は水面なので気化熱で
涼しくなってたかもしれない