シーズン01 第007話 「熱源燃料比較論」
「木炭をつくって焼き鳥を食べよう」
「木炭なら買ってくれば良いじゃない」
「だって悲しまれるし」
「何でよ」
「命を大切にとかそういう」
「焼き鳥に使うなら良いのよ。むしろ一番正しい使い方よ」
「お、焼肉屋さんへの宣戦布告かな?」
「前言撤回。焼肉屋を全面的にバックアップするわ」
「すごく軽々とした身のこなし」
「まあ、とはいっても炭火焼きほど無駄な事もないわよね」
「何でまた」
「弱いからよ」
「急に能力バトルの話になった」
「火力の話よ」
「えーエコなのに」
「木を伐っている以上そこまでエコでもないわよ」
「じゃあ何なら良いの?」
「どうしても炭にこだわるなら石炭」
「アンチエコロジーの極みだ」
「石炭で一気に焼くべきね」
「でも余計なにおいとかつくじゃん」
「卵みたいなにおいのことね。どうせ卵を産むはずだったニワトリが焼かれてるんだから別にいいじゃない」
「急にサイコパスっぽいことを言い出したと見せかけて論点を逸らす高度な戦術」
「ばれたか」
「サイコパスといえば、手足をもいだ小鳥の形をした和菓子があったよね」
「ひよこね。知ってるわ」
「東京……」
「それ以上言うと銃殺されるわよ」
「何で!?」
「あれはどこ銘菓なのか係争中なのよ。だからこの手の話をするときは過激派に見つからないように細心の注意を払う必要があるわ」
「割とむしろ逆に失礼なのでは」
「どうせ礼の通じる相手じゃないわ」
「完全に失礼」
「まあでも、どっちのひよこもおいしいわよね」
「食べ比べたことあるの?」
「ないから想像で言ってるわ」
「そろそろ本当に襲われても知らないからな」
「そういえば、手足のついたひよこを見た人は幸せになれるという言い伝えがあるわね」
「そうなの?」
「まあ私が今作ったのだけれど」
「おい」
「でもすべてのひよこの素体には最初はちゃんと手足があって、製造過程で切り落とされるのよ」
「そんなわけなくない?」
「たいやきだって製造過程で尾びれと背びれを切り落とすじゃない」
「ああ、鉄板二枚で挟んだところに染み出した生地のこと?」
「そうそう。それがついてるひよこを見た人は幸せになれるのよ」
「なるほど、たしかになくはなさそう」
「ないわよ。もう少しリテラシーを磨きなさい」
「自分で騙しておきながら酷い言いよう」
「まあ、結局食べる鳥には手足がついてない方が何かと便利よね」
「骨があるからね」
「ってことで、ひよこは食べる鳥よね」
「そういえなくもないね」
「そしてきっとひよこはオーブンで焼いてるわよね」
「だと思うよ。業務用の大きいやつ」
「でもって、ひよこっておいしいわよね」
「うんうん」
「つまり、食べる鳥は文明の利器で焼くとおいしい。よって炭火焼はゴミ」
「はっ、しまった――!」
ご家庭で簡単炭火焼セット
簡単だったためしがないな