シーズン01 第069話 「固形化動物性蛋白質」
「チーズ、ネズミが食べるわけなくない?」
「食べないわよ」
「何だよ!」
「前話さなかったっけ?」
「記憶にない」
「日々を大切に生きましょうね」
「日々は大切でもチーズは大切ではないので」
「一理あるわね」
「そもそもチーズって専門店にいくとむちゃくちゃ種類があるけど実際に日常生活で食べることほとんどなくない?」
「あれは全てチーズフォンデュのためにあるチーズ群なのよ」
「なんと」
「チーズフォンデュの最適化という一点を達成するためだけに開発され続けてきたのが今の20世紀チーズ群と呼ばれるチーズたちよ」
「恐るべきチーズフォンデュ。でもチーズフォンデュって食べたことないんだけど」
「当然よ。選ばれた人間でないと体内でチーズが固まって強烈な腹痛、最悪の場合には死に至るとこもあると聞くわ。そして私たちは民族的に選ばれにくい体質だもの。致し方ないわ」
「残 of the 念だ」
「……うん、その場で考えてしゃべっても結構破綻しないものね、これ」
「でしょ?」
「何となくあなたが毎回適当なことを言いたがる気分もわかったわ」
「ちなみに実際にチーズの種類があんなにある理由は?」
「それはおいおい考えていくことにしましょう」
「そういえばチーズ専門店じゃなくてもチーズの種類は複数あるよね。あれなんだろう」
「正方形チーズとか、扇形チーズとか、塊チーズとかそういう感じ?」
「あと端材チーズ」
「そんなのもあったわね」
「まず正方形チーズは食パンとかに置いて焼く奴だよね」
「バターやマーガリンの代わりね。同じ乳製品だもの」
「マーガリンって乳製品?」
「コカが入ってなくてもコカ・コーラなのと同じよ」
「コカ・コーラはコカ製品とは名乗ってないのでは」
「そういう見方も出来るわね」
「名乗るメリット無さそうだしね」
「で、チーズに戻ると、端材チーズは自分でオーブン焼きチーズ料理を作るときにふりかけみたいにして使うのよね」
「粉チーズじゃなくて?」
「そういえば粉チーズなんて言うのもあったわね。まあ立派なイタリア料理店なんかでは粉チーズを使うのかもしれないけれど、家庭用だと粉の配分が難しかったり風で飛んだりするから端材チーズが使われるのよ」
「残るは……扇形チーズは?」
「不明」
「塊」
「不明。適宜ピザにでも載せるんじゃないかしら」
「とりあえずピザに乗せれば何とかなりそう」
「それはあるわね」
「あと、ネズミが食べてるタイプのチーズってスポンジみたいな外見してるけど、あれどこにも売ってないよね」
「チーズ専門店ならたぶん売ってるわよ」
「チーズ専門店にしか売ってないチーズをさもチーズ世界代表みたいな感じで描写しないでほしいんだけど」
「ネズミが出てくる国では一般的なチーズなんじゃないかしら」
「日本もネズミぐらい出ますが」
「ネズミが出てきて猫が追い掛け回す国では一般的なのでは」
「確かに。日本のネズミ対策は基本薬剤だよね」
「そんな国ないのでは」
「あるんじゃない? 中東とか」
「中東かー」
「ペルシャ猫って中東猫でしょ?」
「イランだからそうだね」
「ていうか猫ってチーズ食べないの?」
「ネズミが食べるなら食べるのでは」
「駄目じゃない」
「駄目だね」
「やはりネズミも猫もチーズは食べないというのが妥当な落としどころなのでは」
「種類によって食べたり食べなかったり、って感じなんじゃないかしら。ほら、チーズって納豆みたいにわざと黴させるタイプのやつがあるじゃないの」
「納豆は黴てないけどね」
「存在の格としては大体同じよ」
「それもそうか」
「で、黴てるタイプのチーズは猫は食べないけどネズミは食べるから猫にネズミを食べてもらおう、みたいな」
「黴てるチーズ、食べたことある?」
「私? ないけれど」
「でしょ?」
「とは」
「日常チーズは普通黴てないから結局猫もネズミも食べるタイプのチーズが保存されてることが多いから猫管理はできないってことにならない」
「あー、そう言われるとそうね」
「そもそも黴って全部黴させるわけじゃ……あ!」
「思いついた?」
「逆に黴チーズだけをネズミが食べると考えればいいのではないかと」
「というと?」
「まず、黴チーズって模様みたいに点々と黴てるんだけど、ってことは黴てる部分と黴てない部分がチーズにある。そのうちネズミが黴てる部分だけをかじるから、ネズミが食べてるタイプのスポンジみたいなチーズが生成され」
「いや、あれは気泡よ」
「みゅーん」
小麦粉にチーズとバター少々と
水を入れても何もできない