シーズン01 第067話 「32の数字」
「Wより後って要らなくない?」
「三十二進数の話?」
「いや、三十二進数は存在自体が要らないわよ」
「何でだ! キロバイトとかメガバイトとか正確に書くときに使うでだろ!」
「あー、2の5乗。そういえばそうね、気づかなかったわ」
「というかなんで1キロバイトが1024バイトになっちゃったの」
「2の倍数の方が扱いやすかったんじゃないかしら。メモリーとかデザインするときも」
「でもキロは普通1000だろ! SI接頭辞としての誇りはないのか!」
「まあ、ビットとバイトはSI単位系ではないものね」
「ならばよし」
「相変わらず納得のしどころが分からないわね」
「でもさ、1024を1キロバイトとする場合と1000を1キロバイトとする場合のどっちも混在してたりしない?」
「あれは確かに困るわよね。テラバイトまで来ると1割差とかになってるくし」
「恐ろしや指数関数」
「金利には気を付けるのよ」
「私は貰う側にになるので」
「あっそ」
「まあ、理由は大体わかるけどね。機器を作ってる方の人たちが1000バイト1キロバイト主義なんでしょ?」
「大体そんなところね」
「でも機器の製造側も2の倍数にした方が楽なんじゃないの?」
「メモリとかは四角いからそうかもしれないけれど、ディスクは円形だからむしろ2πの倍数になってないと意味ないとかあるんじゃないかしら」
「2πは2の倍数では?」
「小数って知ってる?」
「ああっ!」
「まあ2πの倍数は2の倍数にも10の倍数にも等しく合わせずらいからどっち適用してもいいはずなんだけれどね」
「むしろ2πメモリに最適なデータ構造があるのではないかということがこれからの時代重要になってくるのでは」
「あとさっきから2πっていうか2πrってことで進んでるけど、実際には円盤状のほとんどの部分に書き込めるから積分してπr2乗なのよね」
「ってことはrの2乗のところは正方形と同じだから、係数のπだけ考えればいいのか」
「まあ、そんなところね」
「あ、πって大体3.14だよね」
「三桁目まではそんなところね。小学校教育で広く使われている近似だけれど実は7分の22の方が正確だったりするわ」
「ってことはさ、大体3ちょいなわけだから、πの2乗が10ぐらいになるよね」
「概算ではそのとおおりね」
「つまりπの6乗バイトを新しくキロバイトと定義すれば製造業者にとって都合の良いキロバイト定義が導けるのでは?」
「無理数なんだけど」
「そこはご愛嬌ということで」
「っていうか小さすぎない?」
「無理数だから正確な計算はできないってことで」
「いや、正確な計算ができないわけじゃないわよ」
「無理なのに?」
「大丈夫よ、ちょと無理なだけだから」
「地主みたいな発言」
「とおもったけど、筆算してみたら9.85あるわね。3.14の2乗」
「いけるじゃん」
「いけそうね。後はどうやって普及させるかって感じだけれど」
「勝手に使えばいいのでは?」
「さすがに表示ルールとかが定められてると思うのだけれど」
「ならキロバイトと呼ばなければいいのでは?」
「何て呼ぶのよ」
「カッパーバイト」
「バイトの方も何とかならないの」
「カッパーベータ」
「偽物感がすごいわね」
「円に基づく定義なので文字も曲線の多いギリシャ文字を採用してみました」
「物は言いようね」
「そしてギリシャ文字は22文字なので数字と合わせてちょうど32進数が」
「ギリシャ文字って24文字じゃなかった?」
「あら?」
「っていうか32進数が重宝するのは1024を1キロバイトとする場合であってπの6乗だと関係ないじゃないの」
「あらら?」
「そもそも少数進数とはいったい」
「あららら?」
毛筆で書かれた英語木簡は
卒塔婆とみなすことができるか