シーズン01 第064話 「どういう畜産業」
「家畜ってどこまで?」
「どこって? この家はペット禁止だから家畜もダメよ」
「ペットは家畜ではないのでペットでない家畜なら禁止されていないのではないか」
「そもそもペットと家畜って両立するの?」
「ひよこはペット、ニワトリになったら家畜」
「両立してないじゃない」
「はっ、本当だ!」
「そもそもペットひよこって成長するの?」
「レッサーヒヨコはずっとニワトリにならないみたいな話?」
「なによレッサーヒヨコって」
「劣等ひよこ」
「直訳してもわからないわよ」
「ずっと成虫にならないひよこです」
「虫なの?」
「成虫の鳥」
「成鳥でいいでしょうが」
「成鳥だとする方の成長と紛らわしいじゃん」
「別にどっちでもよくない?」
「確かに」
「あとレッサーヒヨコなんていないわよ」
「確かに」
「ペットのひよこは成長する前に命を落とすことが多いと聞いたことがあるけど、成長できないわけではないはずなのよね。ひよこはひよこだから」
「レッサーヒヨコを飼うような人間は家畜に餌をあげるという発想がないのではないか」
「発言の隅から隅まで間違ってるののも逆にすごいわね」
「まあ、実際のところは自然淘汰での成長成功率がそのぐらいなんじゃない? 養鶏家が頑張ってるだけで」
「というより、ペットとして売ってるひよこが養鶏家のニワトリと品種が違うんじゃないかしら」
「ということは成長させても家畜にならないの?」
「さあ、そこまでは分からないわ」
「食べられない卵も産めないニワトリは屋根の上に吊るし上げてくるくる回すしか使い道がない」
「何よその処刑みたいなの怖すぎるわよ」
「え、昔の家には結構あったじゃん」
「ないわよそんな処刑文化」
「風にあおられてくるくる回ってるの見たことない?」
「……風見鶏?」
「それ!」
「あれはニワトリではありません」
「ニワトリでしょ?」
「いやニワトリだけど」
「ってニワトリの優劣はどうでもよくて、というかニワトリはほぼ家畜だからどうでもよくて、私は家畜リミットが知りたいの」
「一度に飼える家畜の量?」
「いや、家畜そのものの限界」
「収益性?」
「もっと根源的な」
「何なのよ」
「簡単に言うと、モモンガは家畜たり得るかという話ですね」
「いいえ」
「簡単すぎたか」
「簡単すぎたかとかじゃなくて」
「そもそも家畜って何?」
「家の畜……畜……」
「畜生?」
「それも間違っちゃいないんでしょうけどもう少し上品な言い方はないのかしら」
「仏教用語だから十分上品だぞ!」
「上品なのかしら」
「中品ぐらいかもしれない」
「品ニュートラルね」
「いや品はどうでもよくて、家の動物が家畜ならペットも家畜にならない?」
「あー、それは何か違う気がするわね。肉を食べるように飼育してる動物ってところかしら」
「ネズミは?」
「え?」
「それだとネズミは家畜にならなくない?」
「いや、ネズミは家畜ではないと思うわよ」
「あと、羊とかは羊毛のためだし」
「羊肉も一応食べられるじゃないの。移動用のイメージが強い馬も馬肉は食べられるわね」
「でも牛は宗教上の理由で牛乳専用にしてるところもあるよ?」
「それは……いや、牛乳も食べ物ということかしら。別に殺して食べる必要性はないのかもしれないわ」
「そうか。あと家畜だとリャマとかアルパカとかヤクとか」
「聞いたことないのでノーコメントね」
「あとラクダ! ラクダは食べなくない!?」
「見たことがないのでノーコメントね」
「あらら」
「本当に何とも言えないのよね。食べるといわれても食べないといわれても納得できるような気がするわ」
「それは確かに」
「でしょ」
「あとは、犬って家畜かな?」
「犬は……家畜っていうこともあるようなそうでもないような。番犬とかだと家畜っぽいイメージはあるわね」
「羊マネジメントにも犬を使ったりするよね」
「追い立てて逃げないようにするやつね。でも地域にもよるけれど犬はめったには食べないわよね」
「けどオオカミを家畜化したものが犬だって言わない?」
「確かにそれは聞いたことあるわね。ってことは、食べられるかどうかじゃなくて人間にとって有用となりえる動物を飼育していたらそれが家畜ってことなのかしら。この定義ならラクダ問題も解決できるわ」
「ネズミ」
「へ?」
「それならネズミも家畜じゃない?」
「いや、ネズミのどこが人間にとって有用なのよ。食べられないし」
「でも人間のために大量に増やされてない? 主に実験室で」
「……ああ!」
水槽の魚が家畜じゃないのは
なぜか説明しなさい。(10字)