シーズン01 第062話 「豆の話」
「空豆、空要素がどこにもないわよね」
「空色なんじゃない?」
「いや、緑色よ」
「昔は空は緑だった」
「そんなわけないでしょう」
「でもほら、公害とかで空の色が変わってしまったとかあるじゃん」
「どちらかというと緑色の空になってる方が公害の影響よ」
「つまり空豆は公害に負けないで元気に育ってほしいという願いを込めてつけられた名前ってことか」
「空色はどうしたのよ」
「それはそれ」
「そもそも空豆って見たことある?」
「名前だけは」
「要するに見たことないのね」
「見たことないです」
「給食とかで……は出ないか」
「出ないね。枝豆すら出ないね」
「いや、枝豆は出るでしょ。チャーハンとかに入ってなかった?」
「それは枝豆じゃなくて枝豆要素じゃん」
「何よ枝豆要素って」
「枝豆の要素」
「もう少し明瞭に」
「枝豆を要素とする統合体における要素としての枝豆」
「要するに、枝豆単品で料理として出てきたことはないって話?」
「そういうことになりますね」
「そういいなさいよ」
「枝豆要素の方が完結だから」
「ない言葉を使っても伝わらないわよ」
「今あることになったので」
「そういうところよ」
「まあつまり、枝豆にしても空豆にしても、豆の中身だけ出てきても豆全体を理解することはできないじゃん、ってこと」
「空豆は殻がなくても結構特徴的よ」
「でも殻の計上も豆の特徴の重要な要素じゃない?」
「豆の殻って結構同じな気がするのよね」
「インゲンマメと枝豆とトウモロコシは全然違うじゃん」
「なんでトウモロコシが出てきた」
「そこはご愛敬ということで」
「いやいや。トウモロコシは豆じゃないでしょ」
「本当に?」
「トウモロコシが豆の亜種ではないと本当に言い切れる?」
「いや、だってあれマメ科じゃなくてイネ科よ」
「そっかー」
「でも、確かに豆粒だけ見てると豆の特徴を捉え損ねることはあるわね。大豆とか」
「大豆は枝豆でしょ?」
「そうなんだけど、豆まきの大豆って見たことあるかしら。いや豆まきじゃなくてもいいんだけど、干してあるやつ」
「あー」
「干してあるし、あれと枝豆を結びつけるのは何も知れなければ至難の業じゃない?」
「そだね。ピーナッツと落花生と南京豆も全然違うし」
「いやそれは全部同じものよ」
「いやいや。あれは剥き段階で名前が違うんだよ?」
「そうなの?」
「外の殻がついているときは落花生、茶色い薄皮状態が南京豆、白くなったらピーナッツ。お菓子に入ってるやつは全部ピーナッツでしょ?」
「そういわれれば、確かに」
「という説がある」
「おい。また自分で決めたわね」
「いやいや、これはどっかで聞いたことがあるから一定の合理性はあるやつだから」
「どっかッてどこよ」
「……植物園?」
「そんなわけないでしょ」
「そんなわけないか」
「そこまで落花生区分に詳しいのに何で空豆は知らないのよ」
「そういわれましても」
「植物園になかった?」
「植物園にはなかったですね」
「それもそうか」
「マンゴーはあったけど」
「それは熱帯再現の植物園ね。ということは落花生はないわね」
「ないか」
「エリアが違うなら知らないけれど」
「空豆は熱帯産?」
「熱帯……じゃないと思うわよ。国内で栽培されてると思うし」
「どこで?」
「それはよくわからないけれど」
「やはり空豆は実在しないのではないか」
「いや、あるわよ」
「あ! そうか!」
「たぶん違うと思うけど一応聞いてあげるわ」
「空要素の多い豆だから空豆!」
「いいえ」
「豆粒が空を名乗るな愚か者!」
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