シーズン01 第006話 「論理と集合の集合と論理」
「バッタは成長するとカマキリになるって昔は思ってたわ。あの二匹結構似てないかしら」
「人間とイソギンチャクぐらいには似てるんじゃない」
「窒素ガス頭からかけるわよ」
「窒素リキッドじゃなくて?」
「実は空気より軽いからどんどん浮いていくだけなのよ」
「やさしさ」
「いわゆる絶対不安定ね」
「別に意味は知ってるけど当然のように比喩表現に使う単語じゃないからねそれ」
「あら、詩的な表現じゃない。むしろもっと普及させるべきよ」
「どちらかというと死んでも相手にしたくないめんどくさい人みたいな用語だよねそれ」
「実はそんなこともないところが詩的なのよ」
「でも雨降るじゃん」
「じゃあ夏用ね。雨が降ると涼しくなるから」
「詩ってそんな感じで良いんだっけ?」
「けど、絶対安定を人の精神状態と捉えるなら、絶対安定の方は解脱者って感じかしらね」
「解脱と解説の簡単な見分け方が知りたい」
「月と言」
「それは簡単ではない!」
「じゃあうるさいほうが解説」
「つまり音量を図れば良いわけか」
「デシベルでいうと30ぐらい違うわ」
「マグニチュードでいうと?」
「……2?」
「カスじゃん」
「そんなことないわよ。マグニチュード3とマグニチュード5だと結構違うじゃないの」
「実感がわかない」
「じゃあマグニチュード7とマグニチュード9」
「大きすぎてどっちも同じ気がする」
「マグニチュード5.8とマグニチュード7.8」
「あー、なんとなくわからなんでもない」
「結論としては人間の認識はあてにならないということね」
「ということで、比喩はガラスのように透明じゃないとだめなのです。こんな感じで」
「再帰的定義ね」
「つまりすりガラスはゴミ」
「ガラス屋さんに割れた破片で刺されるわよ」
「そういえばガラスってどうやって買うんだろう」
「だからガラス屋さんよ」
「見たことないけど」
「それ言ったら私だって竿竹屋の店舗は見たことないわよ」
「ガラス屋は聞いたこともない」
「じゃあ……二酸化ケイ素屋さん?」
「抽象化すれば良いってものじゃないんだぞ」
「抽象度を上げれば一般的に集合の大きさは大きくなるわ」
「空箱のサイズを大きくしても意味ないでしょ」
「じゃあどこで売ってるのよ」
「実験器具屋さん?」
「それはプレパラートよ」
「いいじゃんガラス製品だし!」
「窓ガラスの話でしょ。例示としてはガラスのコップと同じレベルよ」
「コップは平面じゃないし」
「位相は同じだから」
「それは窓ガラスも同じなのでは?」
「……それもそうね」
「まあ、窓ガラスなんて基本的に家と一緒に注文するし、Windowsに対するInternet Explorerみたいにセット注文がデフォなんじゃない?」
「割れた時はどうするのよ」
「家に連絡する」
「再帰的呼び出しね」
「じゃあ保険屋さん?」
「ああ、それはありそうね」
「武装保険屋さん?」
「そんなものはないわよ。何よそれ」
「ほら、家を守ってくれるタイプの」
「それは保険屋さんじゃなくて警備会社よ」
「え、別なの」
「むしろ何で混ざるのよ」
「両方とも家を守ってくれるから」
「集合の定義が広すぎる」
「でも似てない?」
「似てないわよ」
「少なくともバッタ-カマキリ間の類似度よりは高いと思うんだけど」
「そう? どっちもどっちじゃないかしら」
「じゃあバッタ-カマキリ間の類似度と保険屋-警備会社間の類似度の間の類似度が」
「そろそろ人間の手に負える感じじゃなくなってきたわね」
草原に生きてる虫はほとんどが
緑色だし大体同値