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概念部屋《C-Room》  作者: トルネードおさげたん  トルネードG&T
シーズン01
58/173

シーズン01 第058話 「特殊な三次元図形空間の現実世界における適用事例」

「峠って何だったかしら」

「峠は……峠かな」

「具体的には」

「カイバル峠とか」

「もう少し身近なところで」

「身近……うーん……釜飯……」

「釜飯?」

「なんかほら、お土産でそういうのあるじゃん。峠に」

「カイバル峠に?」

「カイバル峠にはない」

「峠といえば釜飯ってわけでもないのね」

「まあ外国だから」

「残念だけど致し方ないわね」

「そんなに残念か?」

「残念でもないわね」


「えー、要するに峠の形状が知りたいということかと思いますが」

「要するにそういうことね」

「私にもよくわかりません!!」

「なんとなく予想はついてたわ」

「しかし我々には強力な武器がある」

「というと? わからないからって峠を破壊しちゃだめよ」

「そんな危険思想の持ち主ではありません」

「危険思想の持ち主ではあるでしょ」

「危険思想の持ち主ではあるかもしれない」

「そこは否定しなさいよ」

「まあまあ」

「で、武器って?」

「象形文字」

「ああ、なるほどね。漢字で峠を書くと……山に上下だったかしら」

「山を上下するのが峠か」

「表意文字として組み立てられてたならそういうことになるわね」

「ということは、峠はロープウェイ!」

「いいえ」

「えー」

「えー、じゃありません」

「だって知らないんでしょ、峠」

「何が峠なのかは語れなくても何が峠じゃないのかは語れるわよ」

「おお、格好いい!」

「ふふん」


「えー、でもロープウェイじゃないならトロッコとか?」

「まず峠は人工物じゃないでしょう」

「そういえばそうだった。ってことは電車でもないのね」

「もう少し型に囚われた発想力も持ちなさいよ」

「えへへ」

「誉めてません」

「それは私が決めることなので」

「なかなか強い信念体系ね」

「ライフハックです」

「地味に有用かもしれないわね」

「でしょでしょ」

「でもトロッコは峠じゃないわよ」

「じゃあ何が峠?」

「もう少しシンプルに考えましょう。山の上がったり下がったりするところが峠ってことは表意文字から導かれたわ。そして山の上がったり下がったりするところといえば、中腹よ!」

「おお、ということは山頂以外は全て峠」

「そうそう。だからなんとか峠みたいな道路が多いのにひとつも思い出せなかったのよ。なぜなら峠とは山そのものだから峠として有名にはなり得ない」

「カイバル峠は?」

「……誤差?」

「誤差かー」


「うーん、どうやら間違いっぽいわね」

「別に峠が中腹でも私は困らないけどな」

「困る困らないで決められる問題ではないのよね」

「でも山の上がったり下がったりするところって中腹以外なくない?」

「うーん……」

「そもそも峠なんてなかったのでは」

「カイバル峠は?」

「誤差」

「誤差ねえ。っていうかカイバル峠だけ何で名前知ってたの?」

「有名じゃん」

「私は知らなかったわ。地名に疎いだけかもしれないけれど」

「カイバル峠っていうのは、インド的なところにある峠的なもので」

「峠は的なものじゃなくてそのものでしょ」

「そのもの的なもので」

「……まあいいわ」

「ドラヴィダ人先住地域だったインドにアーリア人が入植したときに通ってきた場所として有名なのがカイバル峠だよ」

「なるほど。ってことは話の流れからして山脈の山頂っぽいわね」

「そだね」

「先に言いなさいよ」

「別に大したことでもないかなと」

「大したことです」

「大したことか」

「でも、わざわざそこを通ってきたってことは山頂の中でも低くなってる……あ!」

「ん?」

「わかったわ、峠の正体が!」

「おお!」

「山の上がったり下がったりするところは中腹だけじゃなかったのよ」

「というと」

「一方向から見て上がってるけど別方向から見ると下がってる。三次元だからこそ許される形状ね。つまり、峠とは山の鞍点のことだったのよ!」

「……鞍点?」

「ラクダ」

「理解」




 「ラッパかな♪ ラッパじゃないよ、ラクダだよ♪」

   「間違えるわけなくないですか???」

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