シーズン01 第056話 「ハワイ島論会」
「ハワイってさ、日本に来る前に水没しない?」
「どんな船に乗ってるのよ」
「いや、船には乗ってないけど」
「じゃあ水没するでしょうね」
「でしょ。やはりこれは教育を改革せねば」
「いや、誰も泳いでハワイから日本に来れるなんて思ってないわよ」
「あ、人じゃなくてハワイそのものの話だよ」
「何でハワイが動くのよ」
「あれ? 知らない、大陸移動説? 知識人なのに大陸移動説知らない? 何するの? 知識人なのに大陸移動説知らないで何するの? 大陸移動説知らないで知識人」
「知ってます」
「よろしい」
「私は全然よろしくないんだけど」
「要するにさ、ハワイが年間30㎝日本に近づいてますよー、みたいな話あるじゃん」
「ああ、それが日本に到着する前に海底に沈んでしまうからハワイ島と日本列島がくっつくことはないってことが言いたかったわけね」
「そうそう」
「確かに、考えたことなかったけど言われてみればその通りね」
「つまりハワイは無駄島」
「無駄島って何よ」
「無駄な島」
「島に無駄とかあるの」
「さあ」
「さあじゃなくて」
「無駄じゃない島があるんだから無駄島もあるんじゃない?」
「空集合かもしれないわよ」
「空集合として存在している?」
「存在論の様相を呈してきた」
「あと一歩で背理法が使えそうな雰囲気ね」
「そもそも無駄の対義語って有駄だけど、駄が有るだからマイナスの意味なわけで対義語同士が同じ意味になってしまい整合性」
「ちょっと待った、有駄って何よ」
「駄が有るで有駄」
「聞いたことないけど」
「聞いたことなくても当然の帰結として導かれるので」
「いや、無駄の対義語って有用とかその辺でしょう」
「意味的にはそうかもしれないけど対称性が悪いじゃん」
「そういわれてみれば、駄が無いで無駄なのにマイナス語なのは気になるところね。というか有駄よりも無駄の意味が変わってるのが悪い気が来てきたわ」
「確かに、駄なところが無いで無駄、なら良い意味になるはずよね」
「駄なところすら無い、で無駄になったとか」
「でもそれって要するにほとんど何もないみたいな意味だし、無駄とはちょっと違うんじゃないかしら」
「何もないからそこに行っても無駄だよーみたいな」
「じゃあ有駄は?」
「そんな単語はない」
「おい」
「要するに、無駄の原義は何もないことを表すものなので、ハワイが海底に沈んで地上から何もなくなってしまうという運命を背負った島なのだとしたら、何もない島、すなわち無駄島と呼んでも差し支えないのではないか」
「差し支えあるわよ少なくとも今のハワイにはいろいろあるじゃないのそもそも無駄の原義からして想像の話だし」
「ハワイ、本当に存在する?」
「存在はするわよ」
「ブルーハワイに騙されてない?」
「ブルーハワイはなんとなく響きが好きだけれど」
「残念ながらブルーハワイなんて果物はハワイでは栽培されてないんだよ?」
「それは知ってるわよ」
「あのシロップ何なんだろうね」
「糖蜜」
「夢がない」
「無駄なので」
「おお!」
「何感心してるのよ日常語の意味で使ってるわよ」
ハワイから運ばれてくるコンテナの
うち3割りが青ハワイ液