シーズン01 第055話 「ほぐし」
「うどんはそうめんだけど蕎麦はラーメン?」
「前提条件が偽ならそこからどんな命題でも導ける、みたいな話?」
「いいえ」
「いいえじゃないでしょ」
「いいえ」
「わかりにくいわね」
「わかりやすく言うと、蕎麦がラーメンなのかどうか」
「うん、全然違うわね」
「でしょ。だからわかりにくくいったの」
「一考の価値すらないわね」
「いやいや。一応理はあるから」
「まずうどんとそうめんの話は何だったのよ」
「例示」
「何の例かってことよ」
「麺類」
「そうですね」
「あ、そうめんって食べたことない?」
「あります」
「冷や麦じゃなくて?」
「それは……っていうか冷や麦とそうめんって同じものじゃないの?」
「その辺はまた別の機会に論ずるとして、とりあえずそうめんはうどんでしょ」
「だからそれよ」
「そうめんは太さが違うだけでうどんと同じ材質なのです」
「完全に?」
「完全に」
「じゃあ、名前が分かれる基準は?」
「顔が広いかどうか」
「は?」
「ではなく、断面積が広いかどうかです」
「……それ太さを言い換えただけだから情報量増えてないわよね」
「もちろん」
「まあ、確かに言われてみれば同じ麺って言われても納得できるわね」
「でしょでしょ。で、ということは蕎麦はラーメンなのでは、とつながるわけ」
「そこの因果関係も不明なのよね」
「中華そば」
「逆は必ずしも真ならず」
「いやでもさ、中国の方が日本より広いじゃん?」
「そうね」
「ってことは、普通に考えて中国の概念の方が日本の概念より広いのでは?」
「それ言い出すと日本の概念である寿司はアメリカの概念であるSushiよりも狭いってことになっちゃうわよ」
「狭いんじゃない?」
「狭いわね」
「つまり、包含関係から逆は必ず真になるのでラーメンは蕎麦は蕎麦はラーメン」
「ということは結局ラーメンは蕎麦じゃないし蕎麦はラーメンじゃないってことなんじゃないの」
「なんですと!?」
「いやだって、蕎麦とラーメンってどこが似てる?」
「麺料理」
「他に」
「麺の太さ」
「まあ、個体差はあるけどね」
「以上」
「ほら」
「中華そばとはいったい何だったのか」
「ラーメン味が出せない言い訳」
「納得」
焼きそばと中華そばとの交点は
蕎麦よりむしろ小麦なのでは