シーズン01 第052話 「サラダリミット」
「サラダの限界が知りたい」
「ダイエットでも始めるの? 肥満でもないのに成長期にダイエットするのは体によくないわよ」
「そうじゃなくて、サラダがサラダを保ってられる限界」
「サラダは植物だから遠心分離機に入れたり高温高圧下に置いたりしたらすぐに変成するわよ」
「そっちもそこまでの自明な特殊条件じゃなければ気になるところではあるけど、今言いたいのはもっと人間よりの話であって」
「どこまで雑に野菜を盛り合わせたらサラダから草の盛り合わせと呼ばれるようになるか」
「それもある」
「食材と調理に論点が分けられるわね」
「その食材の話なんだけど、サラダチキンってあるじゃん」
「聞いたことならあるわね。大豆か何かかしら」
「鶏肉」
「鶏肉?」
「そう、鶏肉」
「鶏肉はおかしくない?」
「でしょ?」
「売ってるの?」
「売ってる」
「……なるほど、今回は造語じゃなくて本当にあるみたいね」
「ということで、サラダとして認められる限界条件を考え、ひいてはサラダの定義制定の一助になればと思うところだけど」
「そんなの、生野菜を切って盛り付けたもの、で一発じゃない」
「シーフードサラダ」
「……あー」
「まあ私はあれサラダなのか微妙だと思うけど。定義制定でアレがサラダから追い出されても受け入れるよ」
「私はシーフードサラダも結構好きだけれど。それにシーフードサラダは除外でもいいかもしれないけれど、普通のサラダにツナが乗ったものも除害対象になってしまうわよ」
「いや、それは普通にサラダ+ツナに分離できるのでは」
「混ざってるタイプでも?」
「グレーゾーン」
「とりあえず、野菜以外が入ってるサラダを列挙してみましょうか。まずはシーフードサラダよね。ツナのも含めて」
「シーザーサラダってチーズが入ってるやつだっけ」
「シーザーってチーズの事なの?」
「いや、多分カエサル」
「カエサルとチーズになんの関係が」
「ローマがイタリアだからじゃない?」
「イタリアといえばチーズなの?」
「冷静に考えたら全然そんなことなかった」
「逆にチーズといえばどこかしら」
「北海道」
「国の話よ」
「蝦夷」
「そうじゃない」
「いや、チーズといえばやっぱりイタリアだよ!!」
「そうなの?」
「だってチーズってイタリア語じゃん」
「英語でしょ」
「チーズ分類学の話」
「牛乳とか羊とか馬とか?」
「馬乳とか聞いたことありませんが」
「いいのよ。グルメは自由なの」
「馬は乳は出ないのでは」
「それはない。哺乳類をなんだと思ってるのよ」
「ということは理論上はカモノハシのチーズも……!」
「大型じゃないからとれたとしても微量よ」
「高級食材じゃん」
「ただ貴重というだけで高級食材にはなれないのよ。取れる量が少ないだけでいいならネズミの母乳から作ったチーズがすごい高級品ということになるじゃないの」
「そうか、だからネズミはチーズを食べるのか」
「絵本とかのイメージのせいで誤解してる人が多いみたいだけれど、ネズミはチーズを食べません」
「確かに」
「って、チーズの話はいいのよチーズの話は。サラダでしょう」
「もっと言うと本来の目的はサラダの可能性を試すことであってシーザーサラダを認めない理論を構築することではないんだよね」
「要するにチーズ入りのサラダもOKってことね」
「うむ。同様にマカロニサラダもポテトサラダもサラダとして認めよう」
「逆にダメな例は?」
「サラダチキン」
「それはやっぱりダメなのね」
「だってただの鶏肉だし。チキンサラダなら許す」
「やっぱり生野菜が入ってることが必要条件かしら」
「肉だけのサラダ……乳製品だけのサラダ……うん、両方だめだしそういう感じだね」
「あ、でもポテトサラダって火が通ってない?」
「茹で野菜までならセーフか」
「ポテトチップスは?」
「ダメ」
「フライドポテト」
「ダメ」
「フライドオニオン」
「ダメ。油が介入すると無理っぽいね」
「……あ、なら見つけたわ。サラダの境界」
「お? なになに」
「サラダとサラダ以外の境界は、ハッシュドポテトよ!」
「……マッシュポテトかな?」
「あ」
ポテトから計算されたハッシュ値を
使ったポテト認証手順