シーズン01 第051話 「アーマード企業」
「系列企業の施設を警備してる警備会社、常備軍では?」
「常備軍?」
「常備されている軍のことです」
「それはわかるわよ」
「戦争の都度雇う傭兵の集団ではないということです」
「だからそうじゃなくて、警備会社が」
「常備軍」
「まず前提として、警備会社は軍ではありません」
「それは平和ボケ」
「過激派みたいなこと言い出したわね」
「警備会社から駆けつけるの、控えめに言って重装歩兵じゃない?」
「CMのイメージで判断してるんでしょうけど、普通の警備員はどちらかというと警官みたいな外観よ」
「軽装歩兵もいるのか」
「軽装歩兵などという用語は存在しません」
「一般名詞を二つ組み合わせて作られた単語なのでセーフです」
「軽装でも重装でも、少なくとも歩兵ではないわよね」
「駆けつけるとき槍とか持ってない?」
「持ってない」
「先端がUの字に割れてるやつ」
「それは刺又。しかも普通刺又も持ってこないわよ」
「本当に軽装なのですね」
「軽装だし、歩兵ではない」
「なんかアメリカ映画に出てくる主人公とかのああいう感じのアレなんじゃない? 軽装歩兵」
「いないものの相談をされても困るけど、たぶん今の軍人はほとんどが軽装歩兵なんじゃないかしら。いや歩兵じゃないか」
「重厚長大はもう古い! 世はまさに軽薄短小の時代へ!」
「情報化社会の一段階前の話だけれどね」
「つまり歩兵も今や情報化歩兵へ? 情報セキュリティ歩兵団?」
「警備会社はそういうのもやってくれるわよ」
「やっぱ民兵じゃん」
「違います」
「だってさ、例えば学校も警備会社雇ってるじゃん?」
「そうね」
「で、学校は都市国家じゃん?」
「ん?」
「だから警備会社は兵力。三段論法。Q.E.D.」
「何が三段論法よ全部のステップでジャンプして浮島に飛んでるレベルよ何も証明完了してないわよ」
「ほら、自明なところは省略したから」
「何も自明ではありません」
「えー」
「まずなんで学校が都市国家なのよ」
「関所と城壁で囲まれており出入りを制限されているため。30字」
「しゃべりながらよく数えられるわね」
「勘で言ってます」
「虚言癖」
「ぴー」
「そもそも企業は普通軍事力を保持しません」
「東インド会社」
「それは大きすぎるので例外」
「現代巨大銀行の時価総額は東インド会社のそれを大きく超えていますが」
「GDPが違うからでしょ」
「そう、このように世界的企業の多くの潜在的軍事力が圧倒的であるからこそ、確かな安心のために警備会社が必要なのです」
「なんか話が警備会社推しに移行してるわね」
「ということでこの部屋にも防犯カメラ付けませんか」
「ついてるでしょエントランスに」
「じゃなくて部屋の中に」
「つけません」
「ぴー!」
「観測で部屋の状態を収束」
――心霊写真研究のいま