シーズン01 第047話 「ヒマはナッツですか?」
「ヒマワリって穀物かしら?」
「いや、食べないでしょ」
「あら、食べたことないの?」
「前世がハムスターだったかどうかと聞かれると覚えていないのでなんとも言えませんが」
「そうじゃないわよ。油で揚げたヒマワリの種とか、食料品店によっては売ってるわよ」
「ピーナッツ的な?」
「ピーナッツ的な」
「からあげ的な?」
「いや、唐揚げは肉でしょう」
「ピーナッツの唐揚げ的な」
「ピーナッツの唐揚げ……的な?」
「なるほど」
「なーんか正しく伝わってない気がするのよね」
「まあ、こればかりは食べたことないからね。どんな味?」
「実は私も存在は知ってるけど食べたことはないのよ」
「何だ! 臆病者! 甲斐性なし!」
「急に言ってくるわね」
「ごめんなさい……言い過ぎました……」
「いいから情緒を安定させなさいよ寝不足でしょう」
「思春期なので」
「思春期で説明できる情緒不確定性を越えてるわよ」
「思春期なので、寝不足」
「ああ、はい」
「でもヒマワリの種とかミックスナッツみたいなのにも入ってるの見たことないけどな。本当に売ってるの?」
「輸入食料品店とかかしら。というかヒマワリの種ってナッツなの?」
「ナッツじゃない? ほら、ヒマナッツとか聞いたことある気がするし」
「それキャラクター名よ」
「……うわっ! 本当だ!」
「そもそもナッツなら穀物じゃなくない?」
「ああそうか、穀物論だっけ」
「穀物論ね。ナッツ論はこの前やったもの」
「でも本当にナッツかつ穀物ってない?」
「無いと思うわよ。ナッツを挙げようとするとまた面倒なことになるから穀物を挙げて確認しましょうか」
「まず三大穀物が米麦トウモロコシね。これは普通にナッツじゃないわね」
「トウモロコシも?」
「トウモロコシも、よ」
「ミックスナッツに入ってそうな見た目してるけどな」
「けど、ああいうナッツって炒ってあるやつでしょ?」
「そだね」
「トウモロコシに火を入れたらポップコーンになっちゃうのよ」
「そうか、完全に失念してた」
「私もしゃべりながら思い出したわ」
「ダメじゃん」
「忘れてた人に言われたくありません」
「ぐぬぬ」
「三大穀物以外の穀物っていうと何かしら」
「大豆とか?」
「大豆も一応穀物に含めるんだっけ」
「統計による。ってそうだ、大豆! ピーナッツじゃん!」
「いや、大豆はピーナッツではないわよ」
「……本当だ」
「今日は9時には寝ましょうね」
「はーい」
「ちなみにその状態じゃ思い出せるか怪しいけど他に穀物は?」
「じゃがいも……って含めるのかな」
「地域によっては主食ではあるのよね。でんぷんだし」
「あとバナナ」
「うーん、この辺はいずれもナッツじゃなさそうだし迷宮入りさせておきましょう。いずれわかるときが来るわ」
「そだねー」
「ということで、ナッツなら穀物ではないということが帰納的に導かれました」
「ん? 今思ったんだけど、そもそも穀物を挙げてナッツじゃないことを確認することがナッツなら穀物じゃないことの確認になってる?」
「なってるわよ。対偶だもの」
「なら……じゃない……ならば……ではない……本当だ。しかし対偶は本当に正しいのだろうか」
「証明は言えるけど、いま理解できる自信ある?」
「いいえ、まったく」
「でしょうね」
「ですね」
「つまり、ヒマワリはナッツだから穀物じゃないってことになるわね」
「やったー!」
「ということで、明日ナッツとかが売ってるところに学校帰りにでも買いに行きましょうか。品ぞろえがいい店ならヒマワリも見つかるはずよ」
「おっけー、買ってきといてね!」
「何でよ。一緒に行きましょうよ」
「いや、明日はたぶん学校行かずに寝てるから」
「……今すぐ、さっさと、寝ろ!!」
「ぴーーっ!!」
――「ヒマワリの周りにヒマはありません」
プランテーション管理者は言う。