シーズン01 第046話 「フォートレスマネジメント」
「要塞って今でもあるのかな」
「ヨーロッパに行けばあるんじゃない? 多分見学もできると思うわよ」
「そういうのじゃなくて、本気のやつ」
「本気じゃない要塞なんてそうそう無いと思うのだけれど」
「かつて本気だった要塞じゃなくて、今現時点で本気の要塞だよ」
「軍事拠点としての、ってこと?」
「れ」
「『それ』ぐらい略さずに言いなさいよ」
「言語は基本時代を下るごとに圧縮が進むものなので」
「最終的に50単語に収束しそうね」
「いや、一定数が0文字になって消滅するからそうでもない」
「つまり文字の長さは寿命なのね」
「単語の寿命であるところの文字数は放っておいても減らないけど一度に多く使われると寿命が減ってしまうのだ。たとえば『了解しました』も時間を下るごとに『了解』→『了』→『りょ』と短くなってるし恐らくそのうち『り』になったあと消える」
「了解も普通に使われてるわよ」
「あと『こんばんは』の『こん』とか」
「それ言ってるのあなただけよね」
「いやいや、北国では既に『ん』まで縮んでるから」
「方言でしょうそれは」
「つまり方言は生活に密着している分、単語の寿命も短くなるのだ」
「地理的なものだと思うけれど」
「ということは、さらに北に行くと言語が消滅する?!」
「するんじゃない?」
「……本当だ! 北海道!」
「一応誤解がないようにもうちょっと補足しなさいよね」
「わかるでしょ?」
「わかるけど」
「そういえば北海道にも要塞あったよね」
「軍港?」
「いやいや。要塞は要塞だよ。江戸幕府の」
「ああ、あの星形のやつね」
「ってことは、あの頃までは少なくとも要塞が本気だったわけか」
「あれに関しては国内における城の延長な気がするわ」
「そもそも城って要塞?」
「というよりは、要塞って何なのかしら」
「要塞は要塞だよ」
「具体的に」
「と言われましても、今あるかわからないわけですし」
「昔のでいいわよ。ヨーロッパの」
「えーと……」
「なにかひとつ例を挙げてくれればいいわ」
「……そんなものはない! 要塞なんて最初からなかった!」
「えぇ……」
「確かに、要塞という概念は知っているけれど要塞そのものはひとつも知らないな」
「じゃあ抽象的でいいから説明して」
「ごめんなさい要塞の概念も知らないです」
「まあ、これに関しては私もわからないのだけれど」
「要塞……要塞って何だ?」
「軍事上の要で、籠ったりする所よね。日本の城は要塞の典型例なんじゃないかしら」
「でも西洋にも城はあるけど要塞とは使い分けられてるよね」
「城と要塞の違い、いや包含関係の可能性もあるわね」
「城は要塞?」
「うーん」
「要塞は城?」
「うーん……」
「何もわからんな」
「城壁で囲まれてる町が要塞、とかはどうかしら」
「それは都市。だけど要塞っぽい気もする」
「要塞都市ね」
「要塞都市! 確かにそんな単語もあった気がする!」
「城壁に砲台が取り付けられてたら完璧ね」
「そうそう、そういう感じ!」
「あと港があってもその奥に大きな城壁があったり」
「うんうん」
「いっそ全部海に囲まれててもいいわね」
「要塞島だね」
「でも空から来られるとどうしようもないのよね」
「悲しい」
「あ、もしかして今現在での本気の要塞ってそういうこと?」
「そうそう。対空込みの要塞ってないのかなって」
「難しいわね。そもそも要塞……は定義がわからないままだけど、城ならその意味っていうのは道の途中に置いておいてそこを突破するまで相手に先に進軍させない事だから、航空機で上を越えられると意味がないのよね」
「迎撃基地にはなるんじゃない?」
「ああ、そういう使い方もあるわね」
「島要塞なら自給自足じゃないとそのうち兵糧が切れるけどね」
「というりも島の要塞なら自給自足できるかもしれない、ね」
「すごい!」
「まあでも対空が無いと要塞自体すぐ陥落する事になるのよね」
「ミサイル?」
「とか、原始的に空爆とか」
「地下100階建てとかにしておけば破壊しきる前に迎撃できるのでは?」
「出入り口破壊されてどうやって上がるのよ」
「掘る」
「無理でしょう」
「無理か~」
「あ、でも空爆だけなら止められるかもしれないわね」
「どうやって?」
「火山を噴火させる」
「自爆じゃん」
「と、火山灰によって飛行機が飛ばなくなる」
「自爆テロじゃん」
「宇宙からの攻撃には効かないのが残念なところね」
「もういっそ大噴火起こして気候変動で地球全体を滅茶苦茶にすれば戦争を止められるのでは」
「攻撃は最大の防御的なやつね」
「なるほど、つまり火山さえ囲めば現在でも要塞は運用可能!」
「いや、普通に火山だけあれば要塞要らないでしょそれ」
「あ」
「あの森は一度入ると出られない」
がコンセプトの防衛機関