シーズン01 第043話 「転居境界ライン」
「どこまでがお泊まりでどこまでが引っ越しなのかしら」
「家具を運び込むかどうか」
「家具がなければ1年でもお泊まり?」
「そういうことになるんじゃない」
「それだとホームステイがお泊まりということになるけれど」
「そうなんじゃない?」
「いやいや。だって年賀状はホームステイ先に来るじゃない」
「それはそこにいることが分かってるから」
「居場所が周知されてても引っ越しにはならないの?」
「だって毎年正月はハワイに行きますって人は毎年正月に引っ越ししてるわけじゃないじゃん」
「でもその場合ハワイには年賀状は届かないわよ」
「そうか、つまりハワイには人は住めない」
「いや違うでしょう」
「やっぱり家具依存だと思うんだ」
「でも家具を持ってない人だっているじゃない。っていうか現にいまの私たちもほぼ家具なしの部屋に暮らしてるし」
「つまりここはお泊り……?」
「ではないわよね」
「ではないね」
「だから家具は関係ないと思うわ」
「あ、でもここ机あるじゃん! 机は家具!」
「じゃあ机がレンタルだったらお泊り?」
「うーん」
「というか、宿泊施設に家具を持ち込んだらお泊りじゃなくて引っ越しってことになっちゃうわよね」
「宿泊施設に家具は持ち込まないでしょ」
「持っていくこともあるわよ。テレビとか、パソコンとか」
「家電は家具?」
「家電は家具でしょう。冷蔵庫とか」
「つまり掃除ロボットも家電なので家具」
「そうね」
「ということは掃除道具は家具なのでほうきとちりとりと雑巾も家具?」
「ではなさそうね」
「家具、奥が深い」
「確かに何が家具で何が家具じゃないかってあんまり考えたことなかったわね」
「うーん、不定じゃ定義できないし引っ越しの定義変えるかー」
「何がいいかしらね。今まで出てきた話だと、年賀状が届いたら引っ越し、とかかしら」
「住所じゃん」
「住所ね」
「住所が変わったら引っ越しじゃん」
「でも住所だけ変えた場合は?」
「あー」
「そもそも、引っ越しを一つの条件で記述しようとするから難しいことになってるんじゃないかしら」
「複数条件付けても細則が細かくなるだけで同じじゃない?」
「そうじゃなくて、視点の問題よ。当人にとっての引っ越しと、周りから見た引っ越しって違うんじゃないかしら。内部抵抗と外部抵抗みたいな」
「なるほど、内部引っ越しと外部引っ越しか」
「そういうことね。まず外部引っ越しは住所が変わったら、でいいと思うわ。本籍がっていうよりも荷物とか手紙とかを送るときの送り先ね」
「ダミーの場所を教えてたとしても、外部引っ越しには該当すると」
「難しいのは内部引っ越しよね。家具が云々とか言ってたのはこっちの基準にあたるけど、視点が絞られただけであまり解決してないのよね」
「内部引っ越しに関してはやはり家具バインドでいいのでは」
「いや、さっき宿泊施設の話をしてた思いついたんだけど、ホテルに暮らしてる人っているじゃない」
「いる?」
「いるのよ」
「そういう場合はどうなのかしら」
「もう本人の意識の問題でいい気がしてきた」
「もうちょっとだけ頑張りましょうよ」
「じゃあ、遊牧民は?」
「……そうね、本人に委ねましょう。内部抵抗だって本人が抵抗するかどうかの話だもの」
「そうだったのか」
「いいえ」
「うがーー!!」
住居等侵入罪で規定する
等には艦が含まれている