シーズン01 第042話 「蓮華講」
「レンゲって花みたいな名前してるのにスプーンなんだよね」
「いや、蓮華は花の名前よ」
「なんと」
「ハスの花ね」
「ハスって?」
「レンコンの根じゃない部分」
「つまり、ある種のスプーンの名前がレンゲなのはレンコンを食べやすくするために開発されたから?」
「冷静に考えて欲しいのだけれど、レンゲを使ってレンコン食べやすい?」
「全然」
「でしょう」
「そもそも花の蓮華がスプーンのレンゲより先に命名されたと決めてかかるから妙な結論に至ったのでは」
「いや、流石に植物が先でしょう」
「食事は植物より強いんだよ!」
「何の強弱よ」
「人生」
「?」
「だって、食事は食べないと死ぬけど植物は食べなくても死なないじゃん!」
「そういう定義だからね」
「故に食事は植物より強い! ことわざ!」
「ペンは剣よりも強いみたいに言われても」
「出た、魔術師厨の名言」
「違うわよ」
「ははは、本当は戦争ではデマを流せば勝てるって意味だね」
「それも違……いや違わないのかしら」
「違います」
「何なのよ」
「要するに植物は食事の下位互換というこたです。何故ならば食べられない植物もあるので」
「でも植物には食べる以外の使い道もあるじゃない。建材とか」
「草で家を建てたら一瞬で倒壊するのでは?」
「木材の話よ」
「はっ、そうか! 木も植物!」
「普通の人間は木が植物だって事を忘れないわよ」
「なるほど。つまり天才なので」
「は?」
「すみません……。でも木ってさ、植物って言うよりは木じゃん。いや木は植物だけど、木材は植物っていうより木じゃん」
「推移律により木材は植物ね」
「そうではなく!」
「まあ、いずれにしても木は植物なんだから、木材みたいに植物には食べる以外の使い道もあるのよ。よって植物は食事の下位互換ではありません」
「あれ? ということは、もしかしてレンゲもそれだったのでは?」
「というと?」
「ハスはレンコンとばかり決めつけていたけど、レンコンとして食べる以外にハスの用途があったんだよ!」
「ああ、なるほどね。レンコンは中が空洞になってるから、縦長のレンコンを先頭ブロックだけ半分に切れば」
「スプーン、すなわちレンゲ!」
「……というよりはフォークね。ギザギザだから」
「ダメじゃん」
レンコンを食べるときにはテレビから
離れて部屋を明るくしてね!