シーズン01 第035話 「大地と湖」
「電池が池なの、昔から納得いかないのよね」
「電気のプールってことじゃダメなの?」
「だって、電池が地属性か水属性かって言われたら当然地属性じゃない。そもそも電池は電気自体を貯めてる訳じゃないし」
「そういう細かいニュアンスは平民には伝わらないから」
「小学生でも知ってるわよ」
「私は知らない」
「威張るな」
「はい」
「だいたい、漢字をデザインするのは平民じゃなくて官僚とかその辺の人達でしょう」
「確かに」
「そもそも漢字文字列としての電池って表記はいつ生まれたのかしら」
「電池ができたときじゃないの?」
「アルファベット文化圏で発明されてるからそれはないわね」
「偶然その場に立ち会った中華皇帝が命名したかもしれない」
「産婆じゃないんだから」
「じゃあ輸入時に翻訳したんじゃない? そもそも電池ってアルファベット表記だと何て言うの」
「えーと……electric……button?」
「本当に?」
「ジャストアイディアです……」
「ビジネス用語で挽回しようとするな」
「いいじゃないのよ少しぐらい!」
「でも英文法的には間違ってるカタカナ語だし」
「あう」
「電池が地属性に思えるという認識からそもそも間違ってるのでは?」
「だって、」
「漢字文化圏における属性論では、水属性は水、地属性は土という五行思想に立ち戻って考察する必要がある」
「そうか、地属性って表記はヨーロッパ流だったわね」
「まず基本に立ち返って、電池の根元的な性質は電気だよね」
「そうね」
「そして電気を表す五行属性は金」
「なるほど」
「つまり電池も電地も間違い!」
「ってコラ!」
「あれー?」
「あれー、じゃないわよ。池表記が正しい理由を考察してるんだからね」
「しかし今の議論に誤りはなかったはず」
「電気が金に分類されるっていうのが間違ってるんじゃないかしら」
「というと?」
「電気、というか電子っていうのはアースに流れていく性質があるのよ。もちろん溜まりすぎた場合の話ね」
「アース?」
「そう、つまり地面ね。だから電気は地面と同質、つまり地属性」
「ということは正しい表記は」
「地面の地! ……ってちがーう!!」
「ダメじゃん」
「おかしいわね」
「まあ、実は今のは五行の扱い方が間違ってたんだけどね」
「そうなの?」
「アースって要するに電気を無効化するんでしょ?」
「そうね。お陰で漏電とかが防げるのよ」
「なら、電気は土としてではなく土に無効化される五行属性として扱わないとダメなんだよね」
「確かに、言われてみればその通りだわ」
「そして土に無効化される五行属性は」
「属性は?」
「水!」
「やったーーー!!!!!」
理論上乾電池約1億万個
直列すれば雷が出る