シーズン01 第032話 「まろやか私鋳」
「貨幣を鋳造したい」
「大きく出たわね」
「貨幣鋳造したくない?」
「紙幣の方が楽よ」
「いやいや、そういうことじゃなくて。文明といえば貨幣じゃん」
「まあ……まあ」
「あ、文明ってわかる?」
「それはわかるわよ」
「貨幣、金槌とかで鋳造できるかな」
「まずは金か銀を集めるところからね」
「うわ、前時代」
「貨幣鋳造とか言ってる人間に言われたくないわよ」
「だって、ねぇ。最近の貴金属といえばレアメタルでしょ」
「レアメタルで貨幣鋳造する気?」
「だって、レアだし」
「金槌で加工できるの」
「うーん、銅で!」
「急旋回したわね」
「銅の集め方は……」
「現行貨幣の溶解」
「それは概ね犯罪」
「じゃあ電線からもらうとか」
「犯罪行為を経ずに電線の銅をもらう方法が不明」
「そもそも勝手に貨幣を鋳造するのは犯罪じゃないわけ?」
「それは、ほら、記念コインってことで」
「そもそも誰がどうやってその鋳造した貨幣を使うのよ」
「そうだね、基本は自動販売機かな?」
「はい違法」
「現行の自販機にいれるわけじゃないから! 単に銅本位制の自販機を作るだけだから!」
「グラムいくらにする気よ」
「1グラム1インバースとかかな」
「何よインバースって」
「通貨単位」
「逆関数を通貨単位にするな」
「ほら、物々交換ベースで考えると物をいったんお金に変換したあともう一度別の物に変えるってことになるじゃん?」
「そうね」
「逆関数っぽくない?」
「……あー」
「ね?」
「でも銅の円盤じゃ流石に貨幣とは呼べないし、デザインはどうするのよ」
「-1」
「何でよ」
「と書いてインバースと読む」
「もう少しまともにデザインしなさい偽造し放題でしょ」
「銅本位制なので偽造オッケーです!」
「銅じゃないやつ作られちゃうわよ」
「国家反逆罪」
「私鋳貨幣だから国家じゃないでしょ」
「なんか反逆罪」
「ふわふわしてるわね」
「うーん、貨幣鋳造への道は長く厳しい」
「そもそも何で貨幣鋳造なんて話になったのよ」
「コイントスしやすいコインが欲しい」
「は?」
「ので、ついでに」
「一生サイコロでも使ってなさい」
「うわあああああああん!!」
サイコロで1/2を作るには
20通りの方法がある