シーズン01 第031話 「ややたいやきや」
「木の板って元々から板じゃないんだってね」
「そりゃそうよ。さてはあなた魚の切り身が海を泳いでると思ってるタイプね」
「いやいや、切り身が海を泳いでるのはたい焼きだけだよ」
「たい焼きは海を泳ぎませんっていうかたい焼きの切り身って何よ」
「どら焼き」
「全然違くない?」
「なるほど、たい焼きが栽培されている現場を見たことがないと見える」
「あるわよ。鯛型のお腹を開けてこしあんとかコロッケとか辛子高菜とかを詰めるのよ」
「それは野蛮な方の作り方だね」
「じゃあ野蛮じゃない方のたい焼きはどうやって作るのよ」
「知らない」
「おい」
「まあ希望的観測でしゃべってたから」
「でしょうね。私のコロッケと辛子高菜の話も希望的観測に基づくものよ」
「肉まんと餡まんと中華まんとかがあるんだからたい焼きにも色んなバリエーションがあってもいいのにね」
「そうね。まず最初にはずせないのはシーチキンたい焼きね」
「たい焼きは鯛でシーチキンはマグロ。免疫反応でボロボロになりそう」
「いいのよ既に死んでるから」
「ばっさり」
「死人に口なしよ」
「本当に? たい焼きの口からシーチキンが漏れてきたりしない?」
「それは焼きが甘い」
「一切間違ったことをいってないのにサイコパスにに聞こえる不思議」
「まあ別にマグロでも鯛でもいいんだけど、とにかく魚のたい焼きがあったら食べてみたいわね。あんまんに対する肉まん」
「でもたい焼きの生地にシーチキンって合うかな」
「シーチキンの油分を取り除いて代わりに何らかの味付けをする必要がありそうね」
「海水?」
「せめて塩を使いなさいよ」
「通常の塩を使った魚たい焼きに対し、海から仕入れたそのままの海水を使ったたい焼きは生たい焼きと呼ばれ高級品に」
「逆にシーチキンを甘くしましょうか」
「甘い肉って美味しくなくない?」
「はい、今後砂糖ステーキ禁止ね」
「当然のように言ってるけど一度も食べたことないからね」
「私もよ」
「はい」
「まあ、魚のたい焼きは作ってみないとわからないところもあるし、別にそこまで美味しくなさそうだし」
「下手物を推進するな」
「わかりやすく美味しそうな辛子高菜とかはどうかしら」
「わかりやす……い?」
「少なくとも沢庵よりは」
「なんで当然のように漬け物枠を用意してるんだ」
「ご当地たい焼きといえば漬け物じゃない!」
「確かに」
「でも野沢菜はありきたりすぎるから私は辛子高菜を推すわ。野沢菜、白菜、辛子高菜の三色たい焼きでもいいけど」
「そんなに色変わんなくない?」
「そこはあまり気にするところではないわ。三色なんて所詮気持ちの問題だもの信号機を見てみなさい」
「家の中に信号機はありません。安全なので」
「やっぱり先進国って良いわね」
「発展途上国なら家の中に信号機があるのか」
「家が線路」
「あー」
「ということで、最低限食べてみたいバリエーションたい焼きはこんなものかしらね」
「でも、たい焼きも色んな中身があるけど、まだまだフロンティアは広そうだね」
「え、たい焼きってつぶあん以外の中身も存在するの?」
「そりゃするでしょ。抹茶餡とかカスタードクリームとか」
「知らなかった……」
「ありゃ。本当に?」
「本当よ。まさか気づかないうちに私がたい焼き盲になってたなんて……」
「じゃあ、今度学校の近くのたい焼き屋さん一緒に行く?」
「行くわ!」
「まああそこたい焼き売ってないんだけど」
「何でよ」
魚より餡が好きだということに
気付き小豆を売るたい焼き屋