シーズン01 第025話 「春日(はるび)」
「春、なくない?」
「あるわよ」
「だってまだ五月だけど夏じゃん」
「春です」
「夏日になったらもう夏でしょ」
「仮にそうだとしてもこの前桜が咲いてた頃は春じゃない」
「確かにあの時期は春だったんだけど、あの時期以外春じゃないじゃん」
「少しだとしてもあるんだから春は存在することになるでしょ」
「でも梅雨ってないじゃん」
「だからあるわよ」
「じゃあ許す」
「何なのよ」
「要するに、春って季節じゃないよねっていう」
「春夏秋冬が日本の季節よ」
「そうそれ! 春も梅雨も同じぐらいの長さなんだから春だけ季節で梅雨が季節じゃないのは不平等じゃない?」
「ちなみに秋は?」
「あれはなんかまあまあある気がする」
「六月頃は梅雨前線、九月頃は秋雨前線が来て長雨が続くんだけど、前者が梅雨として分化しているのに対し後者を期間として呼ぶ呼称がないのが春より秋が長く感じる理由じゃないかしら」
「つまり秋も実在しなかった……!」
「違います」
「これで夏、冬、その他の三季となったわけか」
「季節にその他をいれるんじゃないわよ」
「ほら、中部フランク王国的な」
「どこよ」
「中部」
「どこの」
「具体的にはイタリア」
「……どこだっけ」
「富山県みたいなとこ」
「それが嘘だってことぐらいはわかるわよ」
「実際イタリアは地中海性気候で二季だし、我々もこれからは春と秋のことは忘れてイタリアのように暮らすべきではないか」
「じゃあ米禁止ね」
「ひどい!」
「主食はピザとパスタね」
「せめて一緒にご飯を!」
「あわないでしょ」
「じゃあピザの代わりにお好み焼きを!」
「何日本に軌道修正しようとしてるのよ」
「そもそも温帯湿潤気候の日本に小麦はあわない」
「気候の話まで含めて意見を急反転させてきたわね」
「やっぱり春は必要だね」
「生活は気候にあわせて作られてるからね」
「そういえば今年まださくらんぼ食べてないし」
「アメリカンチェリーが先に出回るのよね」
「薔薇もまだ咲き始めだし」
「花だけじゃなくて新緑とかも春の特徴よね」
「今日の晩御飯も春巻きだったし」
「それは関係ないわよ」
夏服と冬服じゃない制服を
中間服と呼ぶならやはり