シーズン01 第021話 「超巨大ピン・ボール」
「ボーリングのスコア計算のやり方難しすぎるから考えた人は責任取ってほしいんだけど」
「ボーリングさんじゃない?」
「じゃあボーリング海峡を発見したのも」
「ボーリングさんね」
「となるとボーリング調査のやり方を提唱したのも」
「もちろんボーリングさんね。もっともこれは今の二つとは外国語の綴りが違うから別のボーリングさんよ」
「なるほどboringとball ring……って待った。ボールとリングでボーリングなんだからボーリングさん関係ないじゃん」
「あら、それもそうね」
「結局ボーリングさんはどこまで関与してるんだ」
「うーん、でもボーリングのスコア計算の方法ってボーリング方程式って呼ばない?」
「聞いたことないんだけど」
「ボーリング方程式なら作ったのはボーリングさんのはずよ」
「そもそもどういう式なのボーリング方程式って」
「えーと、nを0以上15以下としたときに、A_nがA_(n-1)+……打点?」
「よくわからないのでスコアボードに書いて」
「ただ単にボーリングの計算方法を言っただけよ」
「まあ今の時代は全部機械がやってくれるから良いっちゃ良いんだけど」
「考えることを外部に任せて結果だけ受け取ろうとするのは退行のもっとも典型的な例よ」
「じゃあせめてボーリングさん問題にだけでも結論を出そう」
「まずは掘削機を使う方のボーリングがアールのboringね」
「で、投げる法のボーリングがボールとリングでball ring」
「ところでさっきから気になってたんだけど、ballはそのままボーリングの玉としてringって何のことよ。ボーリングにリングは出てこないわよ」
「倒す奴に巻かれてる赤い輪っかじゃない?」
「赤い輪っかは確かにリングだけれどそれが巻かれてる棒であるピンが主体よピン。ボールとリングが並列されるのは明らかに不自然だわ」
「なるほど、つまり投げるボーリングはball ringではない」
「そうね、つまり」
「ボーリングさんは実在する!」
「しないけどね」
「知ってた」
「でもボーリングさんはいなくてもボーリングのルールを作った人はいるはずよ」
「世界ボーリング協会じゃない?」
「なんでボーリングのルールができる前にボーリング協会があるのよ」
「昔ボーリングと呼ばれていた遊戯はもっと簡単なルールだったんだよ」
「例えば?」
「ボールを投げて一本のピンを倒す」
「さすがにそれじゃあ面白味がないでしょう」
「でもゴルフだってそんなもんじゃない? 棒か穴かが違うだけじゃない?」
「ゴルフは広いから良いのよ」
「つまり昔のボーリングはゴルフ場でやってたわけか」
「坂を上るタイプのコースが難関になってそう」
「むしろゴルフ場の中に十本のピンが分布してて、それを先に五本倒した方が勝ちとかだったのでは?!」
「思い付きでしゃべってるにしてはなかなかスリリングなルールが生成されてきたわね」
「それぞれのピンはある程度ダメージを与えないと倒れないようになってて、ボーリングの玉が重くなるほど与えられるダメージ量は大きくなるんだけど、球が重いと投げるのに力がいるとか」
「ターン制RPGの戦闘みたいね」
「こうなってくるとピンの方も攻撃をしてきてほしい」
「ピンにルーレットがついてて、それを回した結果が半径何メートル化に及ぼされるとかどうかしら。例えば1ターン休みとか、ボールにダメージは与えられないから所有プレイヤーが腕立て100回とか」
「いい感じにルールが洗練されてきたしこれはゴルフ場借りるまであるな」
「ところで疑問なのだけどボーリングのルールが難しいから簡略化しようって話はどこに行ったのよ」
「面白ければ問題なし!」
「……今のボーリングルールを制定した人もそういう考えだったのでしょうね、きっと」
ボーリング調査の表記:ボーリング
投げる遊びの方:ボウリング