シーズン02 第072話 「ムチをぶつけ合う集会」
「クイズ大会って漢字でどう書くんだっけ」
「普通に大きいの大と会合の会よ」
「いや、クイズ」
「え?」
「クイズの漢字」
「……ああ、翻訳ね。質疑応答かしら」
「質疑応答大会!」
「何か違うわね」
「近年は外来語に邦訳を当てることが少なくなっているとはいえ、クイズって結構古い概念のはずじゃない?」
「まあ、対応する日本語はあって然るべきな気はするわね」
「問答かしら」
「確かに質疑よりはそれっぽい」
「問答と言うと禅問答のイメージしか無いけれど」
「ZEN QUIZ」
「そういう日本観にありがちな奴ね」
「具体的にどんな問題が出るんだろう」
「禅問答じゃないかしら」
「じゃあ別に良いじゃん」
「質疑応答大会はおかしいけれど問答大会ならありそうな気がしないかしら」
「あるともないとも言えない」
「無くはないわよね」
「無くない」
「イメージとしては、江戸時代の寺子屋が合同で問答大会を開催、みたいな」
「寺子屋だと寺って入ってるからさっきの禅の件が寄ってきてしまう」
「寺以外の教育機関って無かったのかしら」
「兵部省」
「それもどうかしらね。っていうか兵だし」
「文部省?」
「現代的になってきたわね」
「まあ、私塾とかでしょうね」
「私塾の質疑応答大会、じゃなくて問答大会。ありそうな響きね」
「どちらかというとクイズ大会よりもディベート大会に近くなってきてない?」
「クイズもディベートなのでは?」
「そんなことはない」
「嘘の解答をどれだけそれっぽく脚色して観客に信じ込ませるか大会」
「全く別の競技になってきた」
「嘘の解答をどれだけそれっぽく脚色して観客に信じ込ませるか大会のうち、事実を重視する派閥がクイズ大会を開くようになり、論争を重視する派閥がディベート大会を開くようになって、いつしか両者は別の物として認識されるようになったのよ」
「無い歴史の解説じゃん」
「っていう話を嘘の解答をどれだけそれっぽく脚色して観客に信じ込ませるか大会で披露したらどの辺まで勝ち進めるかしら」
「無い大会における無い大会への自己言及じゃん」
「つまり、クイズ大会のない漢字を探し出そうとすることも同様に無意味という話よ」
「アクロバティック説得だ!」
平安にクイズ大会が無いのに
歌のバトルがあるのバグでは?