シーズン02 第070話 「karakara powder」
「からしって何?」
「辛いやつよ」
「辛さないじゃん」
「辛すって何よ」
「そういうこと」
「どういうこと?」
「いや、一般に辛さらいでしょ」
「だから辛すって何なのよ」
「辛すという単語はない」
「ないわね」
「からしという単語はある」
「あるわね」
「どういうこと?」
「そういうことね」
「どういうことだ!!」
「どういうことかわからないという話ということを理解したということよ」
「おお、説明能力が高くて助かる」
「どちらかというとあなたの説明能力に問題があったのだけれど」
「ということで、からしです」
「普通に考えたら『し』で終わるから形容詞よね」
「辛いの古語である辛しがそのまま名詞になったってこと?」
「そういうことね」
「そういう語ってほかにもあったっけ」
「けだし」
「まず形容詞じゃないし名詞にもなってない」
「そもそもどういう意味だったかしら、けだし」
「けを、出す」
「発毛?」
「その毛ではない」
「もともと『辛しもの』だったのが『もの』が落ちてからしになったのかもしれないわ」
「名詞につながるときは連用形になるので『辛きもの』のはず」
「ということは、もともとは『からき』だったのが、言いにくいので『からし』になったわけね」
「『き』が『し』に代わるかな。『す』とかじゃない?」
「変えてみれば駄目なことが分かるはずよ」
「からす」
「ね」
「こけこっこー」
「それはカラスではない」
「いや、冷静に考えてみたら、『辛子』じゃん。『し』も漢字で書ける『し』。子供の子」
「ああ、言われてみればそうね。唐辛子とか、中国の唐にその字で辛子って書くものね」
「唐辛子の漢字はよく見てきたがからしの漢字をあまり見ないので騙されてしまった」
「そもそも唐辛子に対してからしをあまり使わないのよね」
「本当だ」
「こうなってくると現代においては真のからしはもはや唐辛子なのかもしれないわ」
「それはたぶんそうで、からい料理って聞いたときに思い浮かべるのってからしを使った料理じゃなくて唐辛子を使った料理よね」
「辛が完全に乗っ取られている」
「これが中華の力よ」
「そうか、唐!」
「え?」
「ダメか」
からしってそもそも何の植物が
由来なんです? もしかして芥子?