シーズン01 第017話 「有限確定完全情報」
「ぐぬぬ……」
「ほらほら、早く次の石を打ちなさい」
「じゃあここ!」
「うーん、ならここかしら」
「ああああああ!!」
「もしかしなくてもあなた壊滅的に弱いわね」
「そっちが強すぎるんでしょ! 本当に初心者?!」
「初心者よ。あなたが寝てる間に説明書を読んだ以外は条件は同じよ」
「説明書を読まなくてもできるゲームがやりたい」
「ちゃんとできてるじゃない」
「勝てんし」
「それは弱いだけよ」
「ううぅ」
「ま、精進しなさい」
「にしても7×7の碁盤なんてあるんだね」
「初心者向けにいろんなサイズがあるのよ」
「初心者にしては詳しくない?」
「説明書に書いてあったの」
「やたら詳しいな」
「ほら、これよ」
「……って新書じゃん! 説明書じゃなくて攻略本でしょ!」
「説明書よ。ルールとセオリーが書かれてるんだから」
「セオリーまで書いたら完全に攻略本!」
「そもそも説明書と攻略本ってどこが違うのよ」
「説明書は最初からついてきて攻略本は別売」
「それならこの本は借りた時に一緒についてきたから説明書ね」
「ルールだけが書かれてるのが説明書で攻略方法まで書かれてたら攻略本」
「人生ゲームの付属書はある程度プレイの指針が書かれてるから攻略本になるわね」
「人生の攻略本がほしい」
「……偉人伝?」
「ああ」
「つまり囲碁の達人の伝記を読めば囲碁の攻略本と人生の攻略本を兼ねているので効率的」
「伝記に効率性を求めるんじゃないわよ」
「むしろ大河ドラマを見れば複数人の伝記を同時に摂取できるので効率がとても良いのでは?!」
「あれ一作品につき五十時間ぐらいあるわよ」
「なら元ネタの本の平家物語とか!」
「そこまで行くなら歴史書読んだ方が早いわよ」
「それもそうか」
「で、この囲碁の攻略本とやらは結局読むの?」
「読む読む! 終わったら今一度対戦を求む」
「別にいいけど、一時間ぐらいかかるでしょうから私はちょっと暇つぶしに出かけてくるわ」
「えー」
「えーって何よ」
「一人で読んでてもつまらんし」
「本は一人で読むものでしょうが」
「空間的な問題だよ」
「図書室行ってくれば?」
「十中八九そっちにある別の本読んじゃうから」
「意志が弱すぎる」
「それに出かけたら二時間ぐらい戻ってこないでしょ」
「まあ、移動時間とかがあるから読み終わる調度のころには戻ってこないかもしれないわね」
「ね」
「代わりに暇つぶしができるものがあるならここにいるわ」
「あ、そういえば昨日まだ観おわってないサメの映画が確か」
「却下」
囲碁盤の7×7は線の数
なので見た目は実質オセロ