シーズン02 第066話 「茹で刺し」
「刺身って何かしら?」
「刺身は……って、この話題前にもしなかった?」
「したかもしれないわ」
「じゃあ良いじゃない」
「でも、そのときの結論って覚えてるかしら?」
「そういえば何だっけ」
「わからないということは、この件はリセットされてしまったのよ」
「リセットとは」
「ということでセカンドシーズンよ」
「セカンドシーズンとは」
「いや、この前タコ売り場に行ったのよ」
「暴言?」
「何でよ」
「タコを、売る」
「そのどこが暴言なのよ」
「タコは暴言」
「そっちじゃないわよ! 普通の方のタコ」
「普通にはいろいろな意見がありますが」
「だから……直喩の方よ!」
「暴言の方じゃん」
「じゃなくて、えーと、赤い方よ」
「暴言のタコもキレると赤い」
「何かことわざ風ね」
「どういう意味なんだろう」
「人間はキレると血流が増えがち」
「叙述じゃん」
「秋ナス嫁みたいにそういうことわざもあるのよ」
「あれは叙述ですらない」
「暴言のタコのやつ無理矢理教訓をつけるとしたら、怒ると血流が増えるから健康に良い……ってことはないわね」
「嘘をいうタイプのことわざだ」
「ことわざだから仕方ないわよ」
「で、タコの同定ができていない」
「おおむね理解できてるみたいだし良いじゃないの」
「せっかくなのできれいに切り分けたくない?」
「まあ、気持ちはわかるわ」
「ではどうぞ」
「食べられる方のタコ」
「人間は雑食なので当然人間を摂食することも可能」
「普通はしないわよ!」
「それだ!」
「どれよ」
「一般に食用として広く受け入れられているタコ」
「さっき普通には色々な意見がとか言ってなかった?」
「普通は主観だけど、一般は多数決だから」
「そうなの?」
「普通はそう」
「……今の文脈でいくと、『個人的にはそう思ってます』って意味よねそれ」
「理解力がある」
「ということでタコ売り場……が何だったかしら」
「刺身」
「ああ、なるほどね。まあでも、それはまたの機会にしましょうか」
「タコ論が主題になってしまった」
「そもそも刺身の話自体二度目だったわけだし、また気になることがあったら話題に上るわよ」
「またタコ売り場から始まってタコ論の二度目にならない?」
「そっちは結論が出たからもう繰り返さないはずよ」
「覚えてます? 結論」
「……何だったかしら」
「ああ~」
タコかイカかウニかを見るためだけに
開発された人工知能