シーズン02 第065話 「ロブスターが食べたいという話のつもりだったのかもしれない」
「虫ってエビらしいじゃん?」
「何が?」
「味が」
「ああ、味ね」
「同じ甲殻類なので」
「甲殻類だからって同じとは限らない気もするけれど」
「そうなんですよ」
「っていうか甲殻類じゃなくて節足動物じゃない?」
「そうなんでした」
「そうよね」
「虫のうちどこまでがエビ味なのかなということが気になった」
「エビに似てるのはエビ味、そうじゃないのは非エビ味にそれぞれ対応付けられるってよそうできるけれど……」
「具体的に似てる虫とは何か」
「ザリガニかしら」
「虫じゃない」
「あ、確かに」
「というかザリガニはロブスターというエビの一種と考えることもできる」
「エビそのものというわけね。なら、エビそのものであるのであればエビ味になるということが言えるかもしれないわね」
「同一律じゃん」
「つまり、ザリガニみたいに虫にもエビにもカテゴライズされる生き物はエビの味がするから、そこから虫について考えることができるんじゃないかと思ったのよ。ザリガニは虫ではないけれど」
「そんな虫いる?」
「ヤゴとかかしら」
「トンボだが」
「トンボでもあるのは認めるわ」
「全然似てなくない?」
「ザリガニ禁止されると次点がヤゴなのよ」
「水棲生物と見せかけてそもそも幼虫だから成虫になると飛ぶし」
「ってことは逆に、エビについてもまだ誰も見たことがないだけで、百年ぐらい生き続けたエビが最後に脱皮して空へと進出する可能性も考えられるんじゃないかしら?!」
「エビはエビのまま産卵するから成虫は存在しなくない?」
「竹は根からタケノコを伸ばして増えるけれど、最終的には一斉に花を咲かせて交配するっていうのと同じことよ」
「つまり、エビの花が」
「エビの花っていうと刺身に乗ってるタンポポを思い起こさせるわね」
「あれがエビの成虫か」
「つまり、エビ味に最も近い虫はタンポポということがわかったわね」
「……どういうこと???」
「それは誰にもわからないわ」
「逆に虫味のエビとか」「何よそれ」
「そういうものだ」「そういうことね」