シーズン02 第063話 「見せつけるやつの革命」
「前回の看板パラダイムシフトっていつ迎えたんだろうね」
「知らない概念の時期を聞かれても対応できかねる節があるわよ」
「まず前回ですが、ひとつ前の回ということです」
「それは承知しているのよね」
「ここにおける回とは」
「そうそう」
「自然数によって定義されます」
「もう少し具体の方に降りてきて欲しいわね」
「じゃあ自然数にゼロを含むかどうかを具体化しよう」
「その議論できるだけの知識持ってるかしら」
「いいえ」
「では流会で」
「はーい」
「で、何なのよ看板のパラダイムシフトって」
「古来、看板はその名の通り板であったか、いずれの時からか電球を囲むボックスとなり光るようになった。これすなわち看板のパラダイムシフトと称するところのものなり」
「漢文訓読風に言ってもパラダイムシフトとかいう英語が入ってるからうまいこといかないわよ」
「英語であろうと訓読みみたいなもので漢字さえ当てはめてしまえば漢文訓読できるのではないだろうか」
「訓読から漢文を作るんじゃなくて、漢文ネイティブの人が書いた文章を訓読してるという関係だからそうはならないわね」
「じゃあ英文訓読法を開発しよう」
「それは、まあ原理的にできないこともないわね」
「解決した!」
「で、光る看板の話ですが」
「光る看板の話ね」
「いつできたかというと、少なくとも電球登場以降だから20世紀とかになるわね」
「おお、新しめのパラダイムだ」
「パラダイムではない気がするのよね」
「ていうかパラダイムって何だっけ」
「この件については後で話し合うものとして」
「しまして」
「安定的に光らせるには定常電源も必要だから、安定的な電力網が形成されてから。さらに電気代が高すぎても困るから供給量も多くないといけないわね」
「というと、平成か」
「それは文明に対する信頼が低すぎる」
「昭和の看板と言えば板のイメージない?」
「生きてない時代だからなんとも言えないけれど。あと長いし」
「映像の昭和とかあるじゃん」
「映画とか?」
「そういうの」
「映画の場合看板を光らせてしまうと視点がそっちにいってしまうからただの板を使うインセンティブが高いんじゃないかしら。でも都会のシーンとかなら光ってるのもあったはずよ」
「例えば?」
「巨大カメラ屋さんとかね」
「巨大カメラ屋さんの看板、普通の発光看板じゃなくて棒電球で文字を作るタイプじゃないかしら」
「棒の球とは」
「円筒……かしら」
「というかあれは蛍光灯では」
「蛍光灯って光らせ方に用件があるから、設置した人とかじゃないと外見からは本当に蛍光灯かは判別できないのよ」
「えー。字面にそんな記述ないのに」
「白熱電球だってそうでしょう。LEDでないとは漢字からはわからないわよ」
「LEDは熱しないので白熱ではない」
「あら、確かに」
「看板に戻るが」
「行ったり来たりしてるわね」
「つまり看板パラダイムシフトは一度に起こったのではなく少しずつ遷移しており、その中間が蛍光灯看板だった」
「どうなのかしら。棒電球の看板の方が後かもしれないわよ」
「つまりあれがより進んだ姿」
「白熱灯の光る看板から棒電球の看板になって、LEDで光る看板に戻ったみたいな可能性はあるわね。白熱灯光らせると虫が寄るもの」
「一方都会は虫を死滅させるという手法で虫問題を解決した」
「流石に虫ゼロの都市はないわよ」
「看板はパラダイムシフトではなく、産業革命のように革命という名から来るイメージに反して漸進的に達成されたものなのかもしれない」
「まあそうでしょうね。というか電光看板もきっと産業革命の一部よ」
「となると、次の看板パラダイムも大きく変化する手前であれば我々にも予想可能なもののはず」
「まあそうね。ARのやつとかはあるし、そういう感じじゃないかしら」
「VR看板」
「それは普通に設計空間に看板がおいてあるだけのやつね」
「VR看板はVRなので、任意のタイミングで爆発することができる」
「目にうるさい」
「迷惑広告だ」
「ウェブサイトの迷惑広告の系譜ね」
「迷惑広告が正当進化のルートだったなんて……」
「光る看板もなかった時代の人からしたら邪魔に感じたかもしれないし、そういうものなのかもしれないわね」
「迷惑広告が物理看板に逆輸入されて、看板広告をみた人は体のコントロールを奪われるシステムが」
「広告により購買意欲が喚起されるのは実質的に体をコントロールされてるようなものよ」
「つまり、看板はウイルス!」
「まあそうね」
「そうだった!!」
パラダイムシフト、いまなら税込みで
5万8000円なのですが!