シーズン02 第060話 「食べ期」
「食物の秋、増えるから?」
「何がかは限定しないとしたら、まあそうね」
「やったー!」
「やってないわね」
「やってないか」
「人類は更なる高みを目指すべきよ」
「向上心」
「ということで、食物の秋に増えるものと言えば」
「人口!」
「……それはちょっと高みに登りすぎてるわね」
「まあ、食物消費量が増えるのだが」
「そうね」
「秋に食物消費量が増えるのは、そもそも地上における食物が秋に激増するからなのかどうかという推論です」
「ああ、なんとなく受け入れてはいたけれど、普通に人間どの季節でも食べないといけない量は変わらないはずよね」
「ただ秋は収穫期なので、飢えていた人間が食べられるようになり消費量が増える。これすなわち食物の秋と称す」
「称すかしらね」
「または秋は人間の総量が増える可能性もある。つまり出産」
「人間は出産期の決まってる動物ではないわよ」
「しかし一年の区切りと言うことで正月に設けた子供が生まれるのがちょうど秋頃」
「そんなシステムあるかしら」
「ないですね」
「っていうか! 流されてたけど『食物の秋』じゃなくて『食欲の秋』じゃないのよ!!」
「あれ? あ、本当だ」
「食物が増えるから食物の秋、という単純な話じゃなくて、人間食べたい気分になるから食欲の秋、ということね」
「供給サイドではなく需要サイドから分析していく必要があったか」
「秋は気分的に食べたくなるって話かしら」
「冬眠に備えるのかな?」
「人間は冬眠しません」
「昔はしていたかもしれない」
「昔って何よ」
「室町時代とか」
「してないわね」
「いや、やはり人間も冬眠するのでは?!」
「しないわよ。そう何日も連続で寝れるようには出来てない」
「でも冬に雪が降ると農作業はお休みでしょ?」
「まあそうね。出来ることがないもの」
「と、おうちで引きこもることになる」
「寒いのは困るものね」
「このとき消費エネルギーは農作業を行っていた時分より大きく低下するので、これは実質冬眠と言っても差し支えないのではないか」
「言いたいことはわかるけれど、差し支えはあるわよ」
「あるか」
「秋に大量の食べ物を蓄えておいて、それで冬を過ごすという行動様式自体は人間にも観察できるというのは正しいわね。でも冬眠ではない」
「冬眠ではないが、春に備えて大量に食べてエネルギーを蓄積しておくという可能性はあるのでは?」
「それはあるかもしれないわね」
「つまり、これが食欲の秋の正体」
「なるほど、実際に食欲が増進するシステムがあると」
「なのでは」
「うーん、ちゃんと調べてみないとわからないわね」
「あと、秋は採れた穀物や芋類をいっぱい食べるようになるので、炭水化物の吸収による血糖値の急上昇が発生しやすくなり、それに対応した急低下と飢餓感も発生し得る」
「食欲の秋完全に理解したわね」
「天高く馬肥ゆる秋」、現代は
馬がいないのでいずれ消えます。