シーズン02 第056話 「祝☆恒例イベント」
「秋は祝日が多い!」
「そうかしら」
「9月末から10月11月と定期的に祝日でお休みが提供される」
「でも春にもゴールデンウィークがあるわよ」
「そのあと完全にあくじゃん」
「こどもの日の次って海の日まで飛ぶんだったかしら」
「6月末に夏至がある」
「夏至って祝日?」
「いいえ」
「駄目じゃないの」
「ちゃんと祝え!」
「そもそも、祝日と言うからにはお祝いを旨とするはずだけれど、秋分の日と春分の日は何を祝ってるのかしら」
「ゾロ目、的な」
「どういう的よ」
「ほら、昼と夜の時間がそろったのでボーナス100万点! みたいな」
「どういう質の点数なのかしらね」
「それはもう、あれです、天体ポイント」
「貯まるとどうなるの?」
「巨大な天体が地球に突進」
「要らないことこの上ないわね」
「そもそも海の日も山の日も海や山がどうしたんだという話がある」
「海や山がそこにあることへの感謝を趣旨とする祝日じゃないかしら」
「んなこと言ってたら年間八百万日の祝日が必要になるが」
「日々周りのすべてに感謝して生きていかなければいけないよ、という教訓ね」
「それっぽくなった」
「でしょう」
「それっぽくなったので毎日寝て過ごす」
「そうもいかないのがこの現代社会なのよね」
「逆に古代社会ならそうはいったのか」
「いえ、私が対比してるのはどちらかというと未来社会よ」
「あー」
「祝日、結局なんでも良いわけだから、もう少し社会制度を加味して洗練したデザインに基づいて配置してはどうか」
「そういう理由で、昔は日付固定だった祝日がどんどん第n月曜日みたいな位置に移動してるんじゃないかしら」
「少し思うのだが、三連休より水曜あたりに小休止が入った方が幸福度が高いパターンもない?」
「工場とかだと常に動かしておきたいから真ん中に休みとかは入れにくいんじゃないかしら」
「どうせ毎日稼働目指すなら日祝関係なくシフト制だろうし昼勤夜勤フル稼働だろうからどうでも良くない?」
「なかなかに過酷な環境ね」
「人間は過酷なので」
「工場が過酷なのを人間に責任転嫁するんじゃありません」
「人間は工場なので」
「これは一般に広く受けいられている価値観なのだけれど、人間は工場ではありません」
「たしかに」
「結局祝日が多いとは言っても、私たちはそもそも自由日程だからあまり関係のない話よね」
「なんか似たような話ゴールデンウィークの時にもしたね」
「した気がするわね。あと工場は連続稼働するので連休がうれしい話もしたわよね」
「そんな気がしてきた」
「で、ゴールデンウィークの時と同じく、学校には入れなくなるので祝日とはいえど全く影響はないわけではなく、暇と」
「そういう価値判断もある」
「そういう価値判断を採用しているわ」
「よし、じゃあせっかくなのでゴールデンウィークと同様に無の映画を見よ」
「見ません」
「えー。断固?」
「断固」
「何故!」
「祝日の本質である祝いから最も遠い行為の一つだからよ」
「じゃあ最も祝いっぽい行為とは?」
「……ケーキ食べに行きましょうか」
「行く!」
「余暇だから、暇なら暇で良いのでは?」
「そうは言っても暇は暇よね」