シーズン02 第054話 「下へ」
「下方修正って下が明確でない場合はどうなるのかしら」
「どうにもならなくなる」
「でもどうにかはなるはずじゃない。日本語として表現可能なわけだし」
「例えば?」
「そうね。じゃあ、河川を下方修正したとする」
「どういうこと?」
「そうなのよ」
「そうでしょう」
「そうなのよ」
「下方修正、基本的に量に関する話に対してしか使えないんじゃないかな」
「じゃあ河川の下方修正は水量の下方修正?」
「修正ってあるから修正できない量についても使えないね」
「ダムとかをあれこれすれば修正できるはずよ」
「確かにそうだけど何か違う感じがする」
「じゃあ高さそのものについて、水深を下方修正」
「水量の下方修正と同じこと言ってない?」
「いえ、この場合は水底を掘って川全体の高さを下げる工事をすることを言ってるのよ」
「思ったより大規模工事だった」
「みんなで少しずつ掘ればすぐよ」
「なぜそんなことをしなければいけないのか」
「治水」
「治水かー」
「治水なら仕方ないわね」
「仕方なくないが」
「あら」
「下方修正は文字そのものには含まれている情報ではないものの、慣用的な使われ方の影響で『ネガティブな内容』という意味も含まれているような気がする」
「じゃあ治水のための河川下方修正はポジティブだからダメということね」
「河川についてはそれ以前の問題が色々ありますが」
「上流から解決していかないといけない」
「……比喩? 物理?」
「物理よ」
「いいえ」
「いいえではないでしょう」
「上流(物理)とか下流(物理)とか以前の問題ですが」
「じゃあ降雨から」
「違う」
「でも降雨量の下方修正はあるわよね」
「それはさりげなく量とかいうのをいれてるからでしょ」
「あ、本当ね。じゃあ河川量の下方修正」
「なーーーんか違うんだよな」
「何ででしょうね」
「河川量の下方修正、川の本数が減ってそう」
「そういうこともあるんじゃないかしら」
「川はそう簡単に減らない」
「でも涸れ川とかあるわよ」
「涸れ川は涸れてても川」
「腐っても鯛みたいな話ね」
「違……わない!」
「腐っても鯛、涸れてても川、焼かれても森」
「森が焼かれるのはだいたい焼き畑ぐらいしかないが、焼き畑は焼かれたら畑」
「作物を植えるまでは森よ」
「作物植えずに放置しても一旦草原になるんじゃなかった?」
「じゃあ、草原も森!」
「いいえ」
「はい」
「結局河川と下方修正はどうしても合わない気がする」
「量で表現できる対象のはずなのになぜかしらね」
「逆に水量とか水深とか本数とか、表現できる量が多すぎて特定できてない説」
「例のネガティブ制約で特定できない?」
「水量も水深も本数も減って嬉しいか嬉しくないないかは人と状況によるのでだめ」
「じゃあ、絶対に量化できないものならむしろ下方修正可能なのかしら」
「例えば?」
「……いずれの観点でも量化できないものってそうそうないわね」
「つまり、適切に道を示せば全ての物は下方修正可能!」
「閉廷!!」
「廷だったの?」
「じゃあ廷の確率を下方修正するわね」
「できた!」
遺伝子を下方修正してできた
むちゃくちゃデカいクラゲの脅威