シーズン02 第052話 「首の据わらない者たちに捧げる粉」
「ベビーパウダーって何だったっけ」
「あー、赤ちゃんの粉よね」
「日本語の訳だ」
「赤ん坊とは関係してるはず」
「赤ん坊を碾いてできた粉?」
「そうはいうが、人間の赤ん坊を碾いた粉出ない場合、案外我々は今も利用しているのではないだろうか」
「例えば?」
「小麦粉」
「……どちらかというと胎児パウダーね」
「おぞましさが増した」
「ベビーパウダーが赤ん坊を碾いた粉ではないのと同じように胎児パウダーも胎児を碾いた粉ではない可能性もあるわ!」
「まあ、小麦粉だからね」
「それもそうね」
「ということで、胎児パウダーでした」
「でしたね」
「引き続き、ベビーパウダーをお楽しみください」
「単なる粉にもCMタイムってあるのね」
「最近のビジネスモデルの発展は目を見張るものがありますなあ」
「今の感じを発展させても果たしてビジネスとして成り立つのかしら」
「粉を利用した人は、『ということで、○○パウダーでした』と利用後に言わなければいけない広告組み込み型売買契約」
「言わないで無視する人も多そうね」
「粉を利用した人は、『ということで、○○パウダーでした』となんとなく言いたくなるような成分が含まれているパウダー」
「急に怖い感じになってきた」
「粉だからね」
「人間は長きに渡り粉との戦いを続けてきたのよ」
「そうかな?」
「全然そうでもないわね」
「社会には良い粉と悪い粉がある。これすなわち益粉と害粉である」
「定義可能ではありそうね。そんな概念は一般に存在しないけれど」
「害粉には毒鱗粉や粉塵爆発パウダーなどが含まれています」
「言葉のパワーが強いわね」
「害は強いので」
「なんとなく夢のない話ね」
「人畜無害パウダーは弱いので弱力粉と呼ばれている」
「その感じだと強力粉が害があるような感じになるので駄目よ」
「太りやすいという害が」
「弱力粉と比べて?」
「それは知らない」
「何なのよ」
「炭水化物なので」
「米のほうが単位質量あたりカロリー量って大きいんじゃなかったかしら」
「あれは粒なので粉より更に害がある」
「米に害はないでしょ」
「本当だ!」
「結局ベビーパウダーは何なのよ」
「赤ちゃんにぶつけるだけの粉という所まではわかってる」
「状況整理のためだけにずいぶん時間がかかったわね」
「粉は奥が深いからね」
「粉の深い話はもう良いわよ」
「浅い粉」
「ベビー」
「はい」
「赤ん坊だからお化粧と言うことはないんでしょうけど、となると実用用途よね。保湿かしら」
「粉で保湿できる? 普通クリームでは?」
「じゃあ、脱水?」
「なぜ」
「人間の体の何パーセントが水みたいな話って聞いたことあるかしら」
「九割とかなんとかそういうやつ?」
「そうそれ。特に赤ん坊は湿度が高くて、年齢が上がっていくにつれて湿度が低下していくらしいわ」
「人体湿度」
「わかるわよね?」
「わかるが」
「ということで、大人は体の水分を適正な量に保つために保湿を必要とするが、赤ん坊はむしろ脱水しなければいけないほぞ水分過剰なのかもしれないわ」
「つまりベビーパウダーの役割は、塩を塗るのと同じ!」
「赤ん坊は全身傷口みたいなものだから肌に塩を塗るわけにはいかないということで開発されたのがベビーパウダーなのかもしれない」
「ゾンビみたいな世界観だ」
「ベビーパウダーも細かい粉だからみんな粉塵爆発には十分注意するのよ!」
「ゾンビの世界観だ!」
黒色の粉ってあんまりないのかな
あっても何もしないわけだが