シーズン02 第049話 「双対性植物構造グラフ議論」
「木構造のさ」
「木構造?」
「ああ、えっと、樹形図のことよ」
「なるる」
「樹形図の一番下にだけデータがあるタイプのってあるじゃない」
「並べ替えの最終結果とか?」
「そうそう。あれってサツマイモじゃないかしら」
「サツマイモ?」
「これは見た方が早いわね。ほら、こうして樹形図を書いて、一番下にだけデータがあるから丸を書きこむと」
「ジャガイモ」
「サツマイモよ。ジャガイモは地下茎じゃないの」
「別にどっちでもよくない?」
「あとあとよくないのよ、じゃなくて、ジャガイモは茎のほかに根があるから、この樹形図で言うと下の根すべてに丸があるわけではなくなっちゃうじゃないの」
「なるほど」
「その点サツマイモは根がそのまま芋になっているから、いざという時は膨らんでない根でもサツマイモと言い張ることができるわ」
「つまりいざとなったら根焼きを焼きいもと言い張ることができるのがサツマイモの利点」
「そういうことね」
「根焼きってなんだ」
「それは知らないわ」
「秋だから焼きいもが食べたいって話?」
「そうじゃないわよ。ここからが重要なんだけど、この樹形図のサツマイモ部分を切除するとするじゃない」
「収穫された」
「と、先っぽにも分かれてるところにも両方データのない樹形図ができるわね」
「そうだね」
「で、全部ないってことは全部あるってことに解釈しなおしても平等でしょ? だから分岐と先端にすべてデータを書き込むと、樹形図が復元される」
「されたね」
「樹形図じゃなくない?」
「ん? 樹形図なんじゃないの?」
「っていうか、木構造じゃなくない?」
「言い換えでしょ」
「そうじゃなくて、根構造でしょこれ」
「あー」
「根なんだから」
「なるほど。結論から話そう!」
「『木構造って根構造よね』っていきなり言ったら唐突じゃないのよ」
「私はいつもそんな感じだけど」
「そういえばそうだったわね」
「でも、樹形図もとい木構造って横向きに描くから、木とも根とも取れるところだよね」
「確かに樹形図は横向きに描くこともあるのだけれど、本場の木構造はむしろ縦向き、下に広がるように描くことが多いわ」
「根じゃん」
「根よね」
「解決!」
「でも一般には木なのよ」
「木の下に根があることを知らなに人間が名付けたのでは?」
「さすがにそれはないわよ」
「じゃあ木の下にも幹が続いてると思った人間が名付けた」
「結局根の存在を理解してないじゃないの」
「根が一本しかない植物ってないのかな」
「探せばありそうだけれど、少なくとも木にまで大きく成長することはなさそうね。すぐ倒れるし」
「根が一本、幹が一本、幹から直接葉が生えて上にも下にもまっすぐ伸びる。って木があったら建築材に最適じゃない?」
「ないけどね」
「ないかー」
「木構造を根構造だと命名しなおすなら、木にちなんでつけられた各種名前も付けなおさないといけないわね」
「樹形図って部分ごとに名前があったのか」
「まず、一番上の木構造が始まってる部分を根って呼ぶんだけど」
「逆じゃん」
「そう、逆なのよ。何で上にあるのに根なのよ」
「木の下に根があることぐらいは知ってたのか」
「ということでこれを命名し直すと」
「こっちが木になるの?」
「いや、種ね。そもそも木が一点なのがおかしいのと同様に根が一点なのもおかしいのよね」
「ボロクソに言うね」
「だって、こんなだし」
「他には?」
「木構造の結節点を節っていうけど、これはそのままで良さそうね」
「幹でも根でも節は節」
「で、結節点じゃなくて棒の方は枝なのだけれど」
「根側には枝に対応する名称がないと」
「そういうことね」
「あるにはあるよ」
「あるの?」
「枝根」
「枝じゃないのよ」
「枝だね」
「ん?」
「んん??」
「……要するに、枝も枝のままでいいわけね」
「そゆこと」
「それでで、最後に、一番下の節のことを葉と呼ぶわけだけれど」
「根の先っぽには何も……そうか!」
「そう。ここでサツマイモの比喩が生きてくるのよ」
「つまり葉は」
「芋ね!」
※樹形図と木構造が同値かの
確認作業はしておりません