シーズン02 第040話 「サメの旬っていつなんでしょうね」
「食べる春雨ってあるじゃない?」
「あるね」
「食べる秋雨はないのかしら」
「雨、食べれるけど」
「何で急に雨が出てくるのよ」
「秋雨は雨なので。そして雨は水なので食べられる」
「別に蛮人基準の話はしてないのよ」
「伝説の蛮人統一基準、存在したのか」
「蛮人が統一基準を持てるとは思えないわね」
「辛辣」
「まず食べない春雨と秋雨の特徴から考えていきましょうか」
「雨」
「そうね」
「水」
「抽象度上げていくとどんどん発散するわよ」
「雨の種類を指す日本語表現の一種」
「これって抽象度下がってるのかしら」
「対象は変わってない」
「春雨と秋雨の話をしてるのだから対象を変えてしまってはだめでしょうに」
「そもそも食べる春雨はなぜ春雨という名前になったのか」
「食べない春雨に似てるからじゃないかしら」
「雨一般でなく?」
「スコールとかは食べる春雨とはちょっと違うじゃないの」
「スコールって飲み物はあったよね」
「確か炭酸飲料だったわね。きっと炭酸のシュワシュワ感がスコールの激しさを表してるのよ」
「ということは、飲むスコールの正しい使い方は頭からかぶることだったのか」
「違うわよ。食べる春雨も別に頭からかぶらないでしょうに」
「いや、スコールは浴びるものだけど春雨は浴びるものではなくない?」
「どういう基準よ!」
「結局春の雨の降り方っていうと、みぞれとか?」
「みぞれじゃかき氷よ」
「本当だ」
「雨の方の春雨、桜よりも後の季節に降る雨みたいなイメージがあるわ」
「どこの地域の春かに依りそうな話だ。まあ多分京都だけど」
「そうなの?」
「新しい日本語は京都からしか生まれないので」
「そんなわけないでしょ」
「今全国から新語が生まれてるように見えているのは単に全国がすべて京都と化したことが原因」
「京都中心史観という言葉だけでは言い表せない凄みがある」
「そんな言葉はない」
「生み出せなかったということはここは京都ではないことがわかったわね」
「そりゃそうだが」
「そりゃそうね」
「春雨と比較して秋雨という食べ物を生み出そうとしていたわけだけれど、結局この場所は京都ではないので新しい言葉を生み出せないという制約があるなら無理なんじゃないかしら」
「そんな壮大な野望が」
「壮大でもないわよ」
「うれしいお知らせ。秋雨はすでに存在する言葉なので新しい概念を付け足す分にはセーフ」
「ゆるゆる判定ね」
「ここは京都政権の影響力がほぼ及ばない地域なので」
「めちゃくちゃ辺境とか以前に、そもそも京都政権の影響力が及んでいる地域は現代の地上において存在するのかしら」
「しないね」
「全国京都化史観はどうなったのよ」
「過激派の戯れ言」
「ない過激派を生み出して生成した戯れ言を引用するんじゃないわよ」
「なんと! 京都言語生成制約のない現代においては勝手な言葉を好きに生み出しても良いのです!!」
「じゃあ食べる秋雨は?」
「うなぎ粘液麺」
「何よそれ」
「何でしょうね」
「何なのよ!」
春雨がサメじゃないのは諦める
ので秋雨はサメにしてくれ