シーズン01 第014話 「introduction of the GOLD」
「ゴールデンウィーク!」
「連休の中日にも休みになる学校って珍しいわよね」
「工場みたいなものじゃない? 起動や終了にかかるエネルギーが大きいから長く休ませとくか、みたいな」
「生徒を工業製品扱いする学校ってどうなのよ」
「まあまあ、良いじゃん休みがもらえるんだから」
「その理論で言うと普通の一週間の中に挟まれる祝日とかは休ませるコストが大きいから平常通り学校があることになるわよ」
「あああああ」
「ま、残念ながらうちの学校は通常の祝日も休みだし春夏冬の長期休みもそれなりにあるわ」
「何が残念なんだ」
「だって少なくとも中学のうちは祝日は学校に入れなくなるのよ。この部屋には基本何もないわけだし完全に暇じゃないの」
「何かやればいいのでは」
「何かって何よ」
「サイコロを振って出た目の統計を取るとか」
「暇人を通り越して監禁された人に僅かに残された娯楽って感じね」
「まあ、事実上監禁されてるので」
「否定しきれないのが悲しいところね」
「そういえば帰省はしないの?」
「少なくともゴールデンウィークの間にはしないわね。一か月前に来たばかりだし」
「じゃあ旅行でも行く?」
「中学の間は帰省以外の理由では外には出られないわよ」
「あー」
「というかあなたはどうなのよ?」
「私もゴールデンウィークは無帰省です」
「あら、珍しいのね」
「移動が片道一日ぐらいかかるから」
「なるほど」
「ということでゴールデンウィークにしかできないことをしよう」
「サイコロ借りてくる?」
「一人でやってて」
「あなたが言い出したんでしょうが」
「このままではゴールデンウィークが完全に虚無になってしまう」
「よし、じゃあせっかくだからお出かけでもしましょうかしら」
「帰省以外では外に出られないんじゃなかったの?」
「だから中でよ。まだここに来たばかりだし、家と学校を往復する以外は近くのスーパーぐらいしか行ったことがないじゃない」
「ああ、焼肉屋!」
「何の早合点よ」
「この前クーポンをもらったじゃん」
「そういえばそんなのもあったわね。まあたぶんそれも含めて複合商業施設の方にあるだろうから明日行ってみない?」
「うーん」
「乗り気じゃないわね」
「いや、限られた空間でこれから長く過ごすというのにあまりに早く探索を終えてしまうと後で気が狂わないかなって」
「それに関しては心配ないわ。すぐに再開発で新しい施設ができていくはずよ」
「スケールが大きすぎる」
「まあ、再開発はともかくとしても中でも行けるところは結構広いし、複合商業施設の店舗も度々変わるからそこは大丈夫なんじゃないかしら」
「じゃあ行くかー。いずれにしても焼肉はゴールデンウィークでクーポンが切れるし」
「じゃあ明日は焼肉ね」
「で明後日以降は?」
「複合商業施設でサイコロを買って凌ぐ」
「他にもっと何か売ってるでしょ」
「あんまり物が増えすぎるとこの部屋にした意味がなくなってしまうのよね。掃除の人も大変でしょうし」
「じゃあ捨てる?」
「流石に勿体ないわよ」
「捨ててあるものを拾ってきて使ったあとにまた捨てる」
「あまりにも底辺すぎる」
「じゃあ借りる」
「少なくともサイコロはここの受付で借りられるわよ」
「解決じゃん」
「だからサイコロで暇を潰すのは嫌だって言ってるでしょ」
「じゃあ何を借りれば満足なんだ!」
「うーん、映像とかかしら」
「見ての通りこの部屋にAV機器はありませんが」
「視聴覚室」
「おお! ありがとうシェアリングエコノミー!」
「それじゃあ明日はお出かけで決まりね」
「あ」
「どうしたのよ」
「昨日制服汚したせいで出掛ける用の服がない」
「制服二着買ってたじゃないの。もう一着はどうしたのよ」
「この前水を被ったからあの後クリーニング屋に出しちゃった」
「クリーニング屋を洗濯機みたいに使うな!」
たぶんもう取りに行けると思うけど
取りに行くのに着る服がない