シーズン02 第038話 「薄切りにした一口サイズの岩塩をきつね色になるまでこんがり揚げる」
「塩チップスって可能なのかな?」
「塩味のポテトチップスじゃなくて」
「塩のチップス」
「なぜ」
「娯楽」
「道楽が過ぎるわよ」
「でも、岩塩ってあるじゃん」
「あるけれど」
「岩塩は岩ですね?」
「まあ、区分としてはね」
「適度な岩はじゃがいもに似てますね?」
「適度な岩って何よ」
「適切な岩」
「言い換えてもわかりません」
「じゃがいもの岩」
「化石?」
「そういうのもありかもしれない」
「何となくこの先の主張が予測できるから言っておくけれど、じゃがいもの化石は岩塩足り得ないわよ」
「はっ?!」
「残念ね」
「とにかくじゃがいもに形が似てる岩塩があれば良い!」
「まあ、なくはないとは思うけれど」
「やったー!」
「それをチップスに加工して」
「できるかしら」
「揚げる」
「なかなかの健康破壊食品ね」
「サラダ油で揚げよう」
「焼け石に水よ」
「揚げ岩塩に過冷却水」
「ちょっと強そうだけどダメなものはダメね」
「塩チップスに液体窒素」
「食べられる状態になってるチップスはもう熱々ではないんじゃない?」
「塩アイスだ!!」
「一般にイメージされるものとの乖離が激しすぎるわね」
「そこもまた魅力」
「やっぱり岩塩のチップス加工が難しくないかしら。スライサーで擦るわけにもいかないし」
「スライサーの動詞、擦るであってる?」
「あー、スライスる?」
「動詞の動詞化だ」
「テロるみたいなものよ」
「テロルはテロルで一単語であり動詞ではない」
「じゃあ、トゥウィンクる?」
「完全に英語だ」
「難しいわね。何かある気はするのだけれど、どうかしら」
「なるほどなるほど。そもそもスライサーって何だっけ」
「おい」
「スライサー、あーー、あのあれね!」
「そのそれよ」
「スライサーがダメならピーラーを使うのは?」
「構造同じでしょうに」
「何故塩はスライサーでおろせないのだろうか」
「おろす?」
「ループするので次へ」
「そうね」
「どうでしょうか」
「刃こぼれするからだから、モース硬度が岩塩より高ければ良いのかしら」
「ダイヤモンドカッター!」
「さすがに高価すぎるわね」
「あ、じゃあウォーターカッター!」
「溶けない?」
「かに加算」
「は?」
「たしかに」
「……ああ」
「結局塩チップスは社会的にも物理的にも受け入れがたい夢の食べ物だったか」
「わりと悪夢よ」
「夢はない?」
「ないわ」
「一刀両断。その鋭い刃で岩塩もスライスしてほしい」
「だいたい、何で塩チップスを思い付いたのよ」
「ポテトチップスと、食べ物は健康に悪ければ悪いほどおいしい理論」
「いや、それだと水銀とかが上位に来るはずだけれどどう考えても美味しくないでしょう」
「かに加算!」
「ていうか岩塩じゃなくても塩単体を衣とか何もなしに油であげても美味しくないことはすぐわかるじゃないの」
「かに乗算!!」
「かにが過労死するわよ!!!」
「はい」
「はい」
そのままで油が飲める新人類
いるけど、わりと幸福ですか?