シーズン02 第036話 「Beginning 秋」
「秋になった!」
「暦の上では結構前からもう秋ね」
「この前冬服も解禁されたしね」
「カワハギ漁解禁みたいないい方ね」
「冬服漁解禁」
「吊り上げないと着られないのは不便ね」
「冬服は泳いでないが」
「そりゃそうね」
「釣りをして、吊り上げられた人から冬服の使用権を得られる」
「冬服漁とは言わなくないかしら」
「冬服で漁をする」
「漁業用の冬服の話だったのね」
「なにそれ」
「何なのかしらね」
「ということで秋です」
「なったわね」
「だいたい十月の最初の週ぐらいに秋になる気がする」
「台風と残暑の影響が強いわよね」
「そして十月末にはもう冬に」
「秋がない!」
「お、縁起が良いじゃん」
「何でよ」
「飽きが来ない」
「それっぽいけど残念ながら秋は来てはいるのよね」
「飽きが……すぎる!」
「飽き過ぎる?」
「だめだ」
「空の方の空き過ぎるはどうかしら」
「管理してる不動産に空き家がいっぱい」
「全然だめね」
「通勤電車が満員で困ってる人には空きができて良いかもしれない」
「空くとしてどういう理由で空くのかしらね」
「そんなものはない」
「元も子もない」
「元か子ぐらいはあるのでは?」
「正直に言うと、特に考えずに発言したわ」
「秋なので!」
「なので?」
「何かある?」
「紅葉とかかしら」
「雅だ」
「まだ見ごろではないけれどもね」
「miyabilityが失われた」
「そんな英単語はないわよ」
「これから一緒に作っていこう」
「少なくとも日本語圏で使ってるだけじゃ普及しないわよ」
「そうはいっても逆に、ということもある」
「ないわよ」
「雅もmiyabilityもロストしてしまった」
「カタカナ語の多い文章と見せかけて異物が一つ混入してるわけだしなかなか分析が難しい話し方ね」
「難しいついでに人々が騙されて普及」
「しません」
「という秋でした」
「どういう秋よ!」
「どういう秋なんだろうね」
「っていうかまだ始まったばかりだし終わってもないわよ」
「私たちの秋はまだまだ始まったばかり!」
「キャッチフレーズだけはさわやかね」
「秋はさわやか」
「なくはないわね」
「秋はささやか」
「意味は微妙だけどそれっぽさはあるわ」
「ほら、秋は短いから」
「秋が短い……ああ、空きが短いっていうのはどうかしら?」
「不動産屋さんの勝利!」
紅葉を「不吉の予兆」と理解して
いつも冬眠している部族