シーズン02 第035話 「存在しないマロン果樹園国家を訪ねて」
「栗、酷くない?」
「何がよ。棘にでも刺さったのかしら」
「いや、全然。棘つきの栗をわざわざ売店で買うのは愚か」
「そもそも売ってないわよね」
「飾るようのやつが一応?」
「あれ造花でしょう」
「果たして造栗は造花と言うのだろうか」
「造……何て?」
「ぞうりつ。栗は音読みでリツと読みます」
「へー、初めて知ったわ。で、本当の読み方は?」
「本当だよ!!」
「で、栗の棘に刺されたんじゃなければ何が不満なのよ」
「生態」
「棘以外に栗の攻撃的な生態ってあったかしら。皮が剥きにくいとか?」
「そういうのもあるけどそれはほら、剥いたやつを買えば良い」
「コンテンポラリー生活者ね」
「コンテンポラリー生活者なので」
「ならもう不満はないじゃないの」
「トラディショナルな人間としての不満」
「つまり、自分自身の不満はないわけね」
「そうとも言える」
「解決!」
「無い問題は解決できない」
「あら」
「ということで」
「どういうことよ」
「そうだった、まだ説明してないのか」
「まだコンテンポラリー剥き栗の話しかしてないわね」
「便利だね~」
「いいから」
「はい。いやさ、栗って穀物じゃん?」
「穀物かしら」
「穀物とする」
「なるほど」
「穀物とすると例えば日本のライバルは米と芋ということになるでしょ」
「主食?」
「穀物なので当然主食」
「となるとあとは大豆かしら」
「それもあるんだけど、それらと比べると栗だけあまりにも恵みが少ない」
「具体的には?」
「米の二毛作とか、芋を何度も育てるとかはできるけど、栗はなる季節が決まってるから食料獲得が分散できない。穀物にしては恵みが少なすぎる!!」
「なるほどね。でもそれはそうでしょうというか、栗の外見を見ればそのような態度の推測もつくというものよ」
「というと?」
「棘のある穀物なんだから、捕食者にたいして敵対的であることは目に見えてるのよね」
「つまり、まず栗の棘を除去する品種改良が先決」
「そうして作られたのが桃よ」
「そうだったのか!」
「全くそうではないわね」
「あー」
「あまぐりは余った栗が原義です!!!!!」
営業妨害男を検挙