シーズン02 第033話 「ヴァーティカル一次産業 ~アーバン編~」
「水田、横向きに作れたら便利じゃないかしら」
「稲は倒すと枯れる」
「稲じゃなくても大体の植物は倒すと枯れるわよ」
「ツタとかは最初から倒れてるので枯れない」
「あれは倒れてるっていうのかしら」
「アサガオとかも何もしないと倒れた状態で咲く」
「地面に広がったアサガオが咲いてるのもあれはあれで良い感じはあるのよね」
「つまり、植物は倒れても枯れない!」
「どっちの立ち位置なのよ」
「あれ?」
「まあ、稲を横向きに作るっていうのは、アサガオみたい壁を這わせるという話ではないのだけれどね」
「それはそれで便利だと思う」
「ツル植物になるまで品種改良してしまったらそれはもう稲じゃないんじゃないかしら」
「キイチゴもイチゴ」
「キイチゴはイチゴではないしイチゴを品種改良して作られたものでもないわよ」
「リンゴはバラ科みたいな話か」
「違うわよ」
「リンゴはバラ科では?」
「リンゴはバラ科ね」
「違わなかった!」
「水田が横向きっていうの、要するに壁に稲を植えられれば収穫も楽だし都会のビル群も水田として再利用できるし便利なんじゃないかって話ね」
「さらっとぶっ飛んだ話だった」
「粘性が低いほうが空は飛びやすいわよ」
「本当に?」
「本当ではないわね」
「嘘だった」
「でも油よりアルコールのほうが蒸発しやすいじゃない」
「飛ぶってそういう飛ぶか」
「そういうつもりで言ったわけでもないのだけれどね」
「会話の飛行能力が高い」
「それで、壁に稲を植えるには何が必要になるのかしら」
「力によって再着陸した」
「どう?」
「稲」
「それはそうね」
「正確には壁に根を張れる稲」
「別にコンクリートに根を張る必要はないのよ。水田なんだし」
「そこまでの稲は求めてないけど」
「ビルの解体もできて一石二鳥ね」
「空き家問題の進展により都市部の高層ビル群のうち95%以上が廃墟となっているみたいな現実認識を採用してません?」
「そうなの?」
「そうではないです」
「ほら」
「ほらではないです」
「逆に稲はそのままで、壁に水を張ることはできないかしら」
「地上には重力がある」
「噴水みたいに水を循環させれば常に水の膜を作ることができるわね」
「滝にならない?」
「滝耕栽培」
「そんなものはない」
「何とかするのが技術の役目よね」
「ほかにもっと何とかすべきことがあるのでは?」
「例えば?」
「……空き家問題?」
「やはりコンクリート米開発が最優先ね」
水田が収穫および台風時
地下へとひっくり返るパターンは?