シーズン02 第030話 「ジャンピング詰め放題セット」
「電子辞書って普通の辞書が100冊分! しかも音声つき! みたいな宣伝が多いけど、データ容量に直すとどうってことないわよね」
「文字だからね」
「音声データがある時点で辞書が何冊入ってようと誤差よね」
「悲しい。音声辞書をつくろう」
「なによそれ」
「音声の辞書」
「というと?」
「まず調べたい単語を音声で入力す」
「なるほど」
「そして調べた結果出てきた単語を辞書が喋ってくれる」
「電磁やまびこね」
「電磁山彦、でんじのやまびこって読むと日本神話の神々っぽい」
「あの時代に電磁波を司る神々が出てくる神話はオーパーツよ」
「でもゼウスとかプラトンとか雷神だし」
「ゼウスはともかくプラトンは雷神ではないでしょうに」
「間違えた」
「どういう間違え方よ」
「プラトンはギリシアなのでゼウスに引っ張られまして」
「だとしても何故プラトン」
「……エレクトロン?」
「なかなか遠いわね」
「プラトン、エレクトロンっぽさランキングでは上位に来るとはおもうが」
「無いわよそんなランキング」
「ランキングは統計。統計は作ろうとすると意志が大切」
「なかなかに素朴な統計ではあるけれどもね」
「じゃあ最新の統計技法をもちいてエレクトロンに対する各ギリシア人哲学者の最小二乗誤差による最尤推定を」
「最小二乗誤差は最新の統計技法ではないわよ」
「古代ギリシア人から見たら最新の統計技法だからセーフ」
「古代ギリシアの神々は最尤推定ぐらい理解していたはずなのでやはりアウト」
「古代ギリシア神への信頼が厚い」
「神は人より強いことを考えると神ならば余裕でアリストテレスを越えるはずだしそのぐらいになってくると最尤推定もお手のものよ」
「かに!」
「カニの季節もそろそろかしらね」
「カニは一年中生きているのでこの世は年中かにフェスティバル激熱シーズン!」
「それ言ったらブリだって年中生きてるわよ」
「ブリは出世魚なので出世する前はブリではないためそれは嘘」
「じゃありんご」
「木は生えてるけど可食部が常に存在するわけではないので不適切」
「じゃあ……アシタバ?」
「多年草だから一年中あるはずだけどあれも旬とかないんじゃない?」
「うーむ、なかなかに強いわね、カニ」
「バルタン星人だからね」
「あれセミとザリガニよ」
「ということは長命と短命のハイブリッドでバランスがよくなってるタイプの生き物だったのか……これが人気の秘訣……」
「大多数の視聴者はそんなバランス感覚は持ってないわよ」
「よかった」
「で、結局カニはいつなのよ」
「年中活動しているバルタン星人からセミを引いたら夏が消えるので冬」
「あってるじゃないのよ」
「あってないと思います」
「まあそこはあってないわね」
「結局は何もわからなかったわね」
「無知の知なので」「それすら偽よね」