シーズン02 第029話 「Sora-iro」
「空ってさ、いい感じに条件が整ったら緑色にならないかな」
「どういうことよ」
「緑色の空、良くない?」
「良くない」
「えー」
「良くないっていうか、想像がつかないわね」
「発想が貧困。早く発想の産業革命を迎えて発想財を蓄積できるようになって」
「何よ発想財って」
「発送費?」
「それは送る方の発送でしょうが」
「ほら、紙一重だから」
「文字は紙一重でも意味は全然違うわよ」
「発の字が同じである以上全然意味が違うということはないはずである」
「じゃあどう同じなのよ」
「なんかこう、発つぞー! って感じで」
「漢字が?」
「感じが」
「で、空が緑色になるって、具体的にはどういうこと? 夕焼けみたいな?」
「そうそう、青が赤に変わって、最終的に黒になるあんな感じの枠で、緑色にならないかなって」
「確か空が青い理由は太陽光の大気での散乱が原因だったはずだから、空気の組成をいい感じにすればなんとかなるかもしれないわね」
「地球上じゃ無理か」
「オーロラで我慢しなさい」
「オーロラって太陽光なの?」
「太陽光の親戚の子供、の友人ぐらいかしら」
「他人だね」
「まあ、ほぼ他人ね」
「あれって地球の上空で核融合してるのが光として見えるんだっけ」
「核融合はしてないわね」
「核分裂?」
「してません」
「じゃあ何なんだ!」
「どちらかというと化学反応寄りね。太陽から飛んできた電子が地磁気の効果でぐるぐる回って、こう、空気とくっついたりいろいろあるのよ」
「空気とくっついてるなら核融合なのでは?」
「核は融合してません」
「じゃあ何が融合してるんだ!」
「殻かな」
「殻融合か」
「そんな言葉はない」
「なければ頑張る!」
「頑張らなくていいわよ」
「つまり、論理を逆側からたどると、空が青いのと太陽から飛んでくる電子は関係ないのね」
「そこは関係ないわね。関係あったとしたら季節や緯度によって空の色が変わることになるわ」
「それはそれでいいかも」
「放射線が降ってきて死ぬわよ」
「それは困る」
「空が青いのは放射線レベルの話じゃなくて、可視光の範囲内で波長が短いほうが散乱しやすいから紫が抜けて青、そのあと赤になったりするのよ」
「波長の短い順に抜けるだけ? ってことは虹の順番だから、緑は観察できないのか」
「それは……どうかしら。抜けるだけってことなら昼間は赤から青までがセットになった紫色の空になるはずだし、波長の上限も設定されるんじゃないかしら」
「なるほど、つまり空気の組成をいい感じにしてちょうど緑だけが通れる幅が用意できれば緑色の空も」
「理論上は可能ね。というか、現在の地球環境を前提としても、地球全体を緑の波長だけを通すフィルターで覆ってしまえば空は緑色になるわよ」
「おお! ……って思ったけど、それ緑色の下敷きを通して太陽を見てるのと同じなのでは?」
「それもそうね」
「結論としては、上手いことやれば空も緑色になる!」
「綺麗かどうかはわからないけれどもね」
「でも今の空と同じようにある程度波長に幅を持たせておけば綺麗な緑色の空になるんじゃない?」
「まあ、その辺は空気の組成かフィルターの特性に相談ね」
「緑空だったらどうなるんだろうね」
「とりあえず植物が困るわね」
「なんで?」
「葉緑体は緑でしょ? つまり緑の光は反射してるので光合成には使ってないのよ」
「でも赤い葉の植物もあるよね」
「あれって葉緑素的な意味あるのかしら」
「でも緑の光も吸収する葉緑体っていうか光合成器官も不可能じゃないでしょ?」
「なくはないかもしれないね」
「つまり、空が緑なら植物はすべて紅葉している状態になる! 緑色の空に赤色の野山。こういうのも良いんじゃない?」
「うーん、あんまり良くはないかしらね」
「ええー」
水色が空色なのは海水が
澄んだ地域のマウント行為