シーズン02 第028話 「コンビニエンス奴隷」
「冠位十二階って時計と関係あるのかしら」
「関係あるとしてどういう対応?」
「出勤時間」
「身分制度だ」
「身分制なので当然ね」
「問題は上が多いのか下が多いのか」
「下じゃないかしら。奴隷だし」
「奴隷ではない」
「奴隷貴族」
「奴隷貴族、主にどっちなんだろう」
「場所依存ね」
「冠位十二階と出勤時間が対応するのって、一番上は一時間、一番下は十二時間働くということ?」
「まあ概ねそういうことね。十二時間労働で奴隷を名乗るなと思わなくもないけれども」
「奴隷、名乗ってませんが」
「そうだったわね」
「あと一番優秀な人材が一時間しか働いてくれないの損失では?」
「きっと十二倍の生産性があるのよ」
「当時の社会においてそれは驚異的すぎる」
「ほら、聖徳太子って同時に十人の話を聞くことができたっていうじゃない。だから上から三番目」
「上から三番目は三時間働くから奴隷貴族の四倍でしかないのでは」
「……奴隷貴族とかいう無い言葉を使うんじゃありません!」
「自分で言い出した用語だし逃げ方が下手すぎる」
「まあ、上から二番目が六倍で一番上が十二倍だから、上から二番目には居られるけれどもトップには一歩及ばずといったところかしらね、聖徳太子」
「ボスを倒したと思ったら裏ボスが出てくるやつじゃん」
「フビライ・ハンに対するチンギス・ハンよ」
「本当か?」
「なんとも言えないわね」
「何とか言って」
「NaN」
「ナン?」
「Not a Number」
「フビライ・ハンもチンギス・ハンも数字ではないので正解!」
「よくよく考えたら当時の時刻って十二等分じゃなくて十等分だった気がしてきたわね」
「十等分?」
「甲乙丙丁のアレ」
「干支の支の方か」
「そうなの?」
「丙午の丙の方」
「庚午農民戦争の庚の方ね」
「干支の干の方だった」
「言われてみれば十二支だしそりゃそうね」
「十干十二支!」
「つまり時刻は干による十等分?」
「ところで藁人形を神社の神木に打ち付ける儀式を行うのは何時?」
「丑の刻参り……なるほど!」
「そう。時刻は古代においてもちゃんと十二分割です」
「これで冠位十二階時刻対応仮説の必要条件は満たされたわね」
「ただし、古代においては一日はそのまま十二分割」
「今もそうでしょう」
「そうじゃなくて午前と午後とかなく」
「……なるほど! ということは奴隷貴族の労働時間は」
「ぴったり二十四時間営業!」
「冠位十二階は十二進なので
シュメール人が発祥!」「いいえ」