シーズン02 第022話 「窮地!散文クッキング」
「料理番組ってあるじゃん」
「あら、あなたも料理とかするのね」
「しないよ?」
「でしょうね」
「でしょうねって何だ!」
「だって春に電子レンジでレトルトカレー爆発させてたじゃない」
「それはほら、春だから」
「因果が謎ね」
「春には新しいことに挑戦する季節だよ」
「要するに電子レンジを使うことが新しいことへの挑戦だったってわけね」
「いや、饅頭とかは温めたことがある」
「中華まんね。あれは袋に書いてある通りにやればうまくいくしそうそう失敗するものでもないわよね」
「ところがどっこい、肉まん一個を十分とか温めると爆発します」
「何でそんなに温めたのよ」
「やったわけじゃないよ! カレーが爆発したときにせっかくだから調べただけだよ! まあ桁間違いじゃない?」
「一と十、そうそう間違えるかしら」
「指数表記で入力する電子レンジだったのかもしれない」
「そんなものはないわよ」
「関数電卓みたいにさ、食材に与えるエネルギーを数式で指定できる電子レンジがあったら面白いのにね」
「普通の人は使いこなせないわよ」
「一流の料理人だけが使いこなせる、究極の電子レンジ……!」
「料理人、電子レンジ使うかしら」
「使うんじゃない? 低価格帯レストランに行くとすべてのメニューで電子レンジで温めたレトルト食品がそのまま供されるとか」
「さすがにそれは無茶じゃないかしら。一部はあるかもしれないけれども」
「そうかな。割と行けると思うけど。っていうか小学校の給食もそういう感じじゃない?」
「少なくともうちの給食は違ったわよ」
「そうだっけ」
「そうだったでしょ!」
「私は別に固形燃料で温められた水の中にレトルトカレーの袋が入っててそれを好きなだけご飯にかけて食べるみたいな給食でも全然良かったけどな」
「何よその無駄の極み」
「固形燃料、低価格帯旅館とかでも使われてるみたいだし、そこまで高級オブジェクトというわけではないのでは?」
「高級ではないのは確かだけれど、そんなに安いものでもないとは思うわよ」
「市場が小さいせいで均衡価格が上がっちゃってるだけじゃない? みんなもっと一般家庭で固形燃料を使おう」
「使わないわよ。一般家庭で使うとしたら缶のガスを使うタイプのガスコンロね」
「缶のガス? 自動販売機とかで売ってるの?」
「飲み物の缶じゃないわよ。見た目のイメージとしてはそうね、害虫駆除のスプレー缶みたいな感じかしら」
「なるほど、スプレー缶と同じように上にあるボタンを押してガスを噴出させて、それに火をつけるわけだね」
「うん、あなたの直観力ではそのうち重大事故につながりかねないから家庭科の座学を修めるまで料理は禁止ね」
「やはりこれからは家庭内労働もアウトソーシングしていく時代だよね、うんうん」
「そもそも私たちの今の生活がそう言う感じよね。私も実際に毎日食べるものを自炊してるわけじゃないし」
「するときは一緒に作ってねー」
「いいわよ、その場合食材は買ってきてね」
「食材……トムヤンクンとか?」
「トムヤンクン食材じゃないわよ」
「食材じゃないなら何なんだ!」
「料理名よ。どんな料理なのかは知らないのだけれど」
「何だろう……里芋の煮転がしとか?」
「たぶんそれは違うわね」
「ということで今日は里芋の煮転がしを食べに行こう!」
「そんな店あったかしら」
「ないことはないでしょ」
「里芋をメインにしてる店は近くにはないわよね」
「里芋はないか。やはりメインに据えるならタロイモ」
「熱帯地域の主食っていうのは聞いたことあるけど、あれも食べたことはないのよね」
「芋だしみんな同じじゃない?」
「そんなことはないわよ。ジャガイモで焼き芋をやってもぱさぱさなだけよ」
「砂糖を入れ忘れたのでは?」
「焼き芋に普通は砂糖は入れません」
「なんと」
「で、里芋のお店って?」
「食堂です」
「ああ、なるほどね」
「秋だからね。今日は里芋もあったはず」
「結構外に出ちゃうことが多いけれど、食堂も全然悪くないわよね。メニューも毎日変わるしいろいろあるし」
「一般ホテル施設の食堂ぐらいのクオリティはあるよね」
「朝も主食なら大体種類が用意されてるし」
「え、タロイモもあるの!?」
「タロイモはないわね」
「ああキャッサバ」
「もないわね」
「ダメじゃん!」
「いやあっても食べないでしょ」
「あとは……バナナは?」
「それはあるわね」
「やったー!」
でんぷんを溶かした水を石炭で
十時間煮た『真の焼き芋』