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概念部屋《C-Room》  作者: トルネードおさげたん  トルネードG&T
シーズン02
120/173

シーズン02 第020話 「潜水士が水上に上がってくる際の擬音語またはその様子を表した擬態語」

「コポガバって言いにくくない?」

「何よそれは」

「コーポレートガバナンス」

「言いません」

「まあ中学生がコーポレートガバナンスとは距離を置いた生活をしていることは至極当然であり責められるべき事由ではないのですが……」

「そうじゃなくて略称の話よ」

「コーポレートガバナンスは日常で使うと」

「別にそういうことではないけれど」

「ほらね」

「むしろあなたは使うの?」

「使いませんが」

「はい、解決ね」


「コポガバ問題については解決してない!」

「だからコーポレートガバナンスの略称はコポガバとかいう擬態語みたいな表現ではありません」

「擬音語では? 風呂の栓を抜いた時とかの」

「表面張力を利用したコップをひっくり返す手品をやろうとしたけど手順に誤りがあったせいで失敗してコップの水をぶちまけてしまった様を表す擬態語」

「おお、それっぽい」

「ちなみにぶちまけた水が床に広がるさまを強調したい場合はコポガバじゃなくてコポガビャになるわ」

「じゃあ頭の上でやったせいで水を全部かぶってしまった場合は?」

「あまり聞いたこともないけれどそれもたぶんコポガビャでいいはずよ」

「水をかぶっている様を表す擬態語はビシャビシャだから法則から導くとコポガシャじゃないの?」

「論理的には確かにそうなるのだけれど、そうすると後半にガシャが表れてしまって別の擬態語条件を想起させるからここはあえて音の近いコポガビャが使われるのよ」

「なーるほど」

「わかってくれたようでうれしいわ」

「日常生活で使われてること見たことないけど」

「私も見たことないわね」


「じゃあ結局コーポレートガバナンスの略称は何になるんだ!」

「こういうのは日本語でうまくいかないときはアルファベットを使うのよ。特にカタカナ語の場合は元が英語だから英語圏の方で元から略称が用意されている場合は基本アルファベットになるわ。ということで Corporate の Governance だからCGね」

「それではコンピューターグラフィックスでは」

「この手の被りは多少は仕方ないところがあるとして許容されるものなのよ。例えばPDFといったらあなたは最初に何が思い浮かぶかしら」

「文書ファイル。何の略かは知らないけど」

「Portable Document Format ね。でも同じPDFという略称を用いる用語として確率密度関数 Probability Density Function というのもあるわ」

「確率密度?」

「そうそう。確率密度の関数よ。まず普通確率といった場合に想起されるのは離散確率関数だけれど、ここでは連続確率関数について」

「ストップ」

「連続確率関数では確率変数がある特定の値をとる確率が常に0になってしまうからここでは例えば一変数の際は累積である分布関数を」

「ストップ!!!」


「はい、ということで」

「なんだっけ」

「コーポレートガバナンスよ」

「そうコポガバ!」

「コポガバではないという話よ」

「でもさ、コーポレートガバナンスがCGでコンピューターグラフィックスとの重複が許されるなら、日本においてはコポガバとして擬音語もとい擬態語との重複が許されてもよくない?」

「残念ながら日本ではあまり略称重複は認められない傾向にある気がするわね」

「でもコンクリートもコンパもコンじゃじゃない?」

「そもそもコンパって何のことかよくわかってないのよね」

「あれはコンパニオンの略だから、仲間?」

「コンパって開催するものよね。仲間を開催するだと意味としてよく通らない気がするのだけれど」

「仲間の集合なんじゃない? いや数学的な意味じゃなくて。仲間が集まってる状態がコンパニオン、みたいな。英語と日本語のニュアンスの違いがたちあらわれてるのでは?」

「じゃあ合同コンパニオンは?」

「複数の集合同士が集まって新たな集合を形成する、みたいな」

「なるほど、直積ってやつね」

「……だから集合論ではなく!」


「集合じゃなくて集団っていえば紛らわしくないわよ」

「集団だとグループっぽくない?」

「グループも仲間みたいな印象がある言葉だし、人間関係は難しいわね」

「そういえば companion の他に company でも仲間だった意味があった気がする」

「カンパニーだと会社ね」

「あれ、カンパニーガバナンス?」

「コーポレートガバナンスよ、同じCだけれど。コーポレートだと仲間っていう感じはあんまりしないわよね」

「仲間意識のない会社組織、それがコーポレート」

「殺伐ね」

「……なるほど! だから必要なのはカンパニーガバナンスじゃなくてコーポレートガバナンスなのか!」

「親しき中にもという話もあるし、仲間内でもある程度の統率は必要なんじゃないかしら」

「それはそうなんだけど、たぶんガバナンスみたいな恐ろしい感じじゃなくてもっとこう、リーダーシップ的な?」

「あー」

「ということで、企業がグローバル化して規模が巨大になってくるとやっぱりカンパニーリーディングでは間に合わなくなってコーポレートガバナンスが必要になるわけで、やはりこれからの時代こそコポガバの重要性が」

「CGだって言ってるでしょうが!」




 カンパニーホールディングスLTD

   コーポレーション株式会社

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