シーズン01 第012話 「低開発向け多元一次方程式」
「果物って思ってるよりも高いわよね」
「りんご算?」
「何よそれ」
「小学生が習う一次方程式のやつ。りんご4個とみかん10個で1000円だからどうのこうのみたいな」
「あれは一般にはつるかめ算というのよ」
「単位がすごい」
「どこがよ」
「1000x+10000yの方程式でしょ」
「鶴は千年亀は万年じゃないわよ足の本数で計算するのよ」
「なるほど、果物屋さんにおける実用的な計算であるりんご算に対する肉屋さんにおける実用的な計算としての鶴亀算ってことか」
「肉屋で鶴と亀の肉売ってるの見たことないわよ。辛うじてすっぽん」
「すっぽんって肉屋で買える?」
「知らないわ。想像で言ったから」
「なんだ、見たことないんじゃん」
「勝ち誇ってるけどもとはといえばあなたが肉屋で鶴と亀がとか言い出したのが始まりだからね」
「すっぽんといえば月だけど」
「珍しくまともな連想ね」
「月食ってすっぽんが甲羅に隠れてる状態のことなのかな」
「発想は全くまともじゃなかったわ」
「じゃあすっぽんがひっくり返った状態?」
「月に類推して考えればすぐわかることだけれど月食だからって月が180度回転したりはしないわよ」
「本当に? せっかくのお祭りだしって調子に乗って実は回転してたりしない?」
「月を何だと思ってるのよ」
「天体だが?」
「ああもう」
「そもそも月とすっぽんって共通点はどこなんだ」
「あれは甲羅の丸さによる類推だったと思うわ」
「頭じゃなくて?」
「うーん、確かに満ち欠けの類推で行くとそっちなのよね」
「となると月食はすっぽんが水中とかに潜っちゃった状態か」
「それはどちらかというと曇りね」
「今思ったんだけど、曇りと晴れで一次方程式できないかな」
「どういうことよ」
「ほら、だいたい晴れが5で曇りが9でしょ?」
「……ああ、全天の9割以上に雲がかかってるときに曇り、3割から8割りの間の時は晴れで、それぞれの天気の時の雲量の平均をとったってことね」
「さっすが、話が早い!」
「あなたはむしろもう少し説明能力を磨きなさい」
「まあそれで、累積の雲の量が100になったら雨が降るとするじゃん?」
「そうなの?」
「知らない」
「堂々と噓を言うんじゃないわよ嘘を」
「仮定だからセーフ」
「小学生相手の問題に嘘の仮定をするんじゃない」
「じゃあ民間伝承的なやつってことで」
「伝承は自分で考えるものじゃないわよ」
「じゃあ代わりに考えて」
「一次方程式をを?」
「りんご算を」
「どうしてもりんご推しなのね」
「できる限りりんごを使ってりんご算の名称を普及させよう」
「……そうね、じゃありんご3個、みかん4個、ピーマン7個、じゃがいも6個、ニンジン3本、玉ねぎ11個、エリンギ50本」
「何元方程式にするつもりだ」
「行列の掃き出し法で解けるわよ」
「要求レベル無茶苦茶すぎる」